現代思想の源流 の商品レビュー
豪華な執筆陣によるシリーズものの第00巻。冷戦終結後しばらくしてからの著作とはいえ、まだまだマルクス主義の影響が残っている部分が多い印象。長年影響下にあった人々にとっては、そう簡単にマインドチェンジできないのだろうけど。そもそも思想史とはそういった積み重ねの歴史ではあるのかもしれ...
豪華な執筆陣によるシリーズものの第00巻。冷戦終結後しばらくしてからの著作とはいえ、まだまだマルクス主義の影響が残っている部分が多い印象。長年影響下にあった人々にとっては、そう簡単にマインドチェンジできないのだろうけど。そもそも思想史とはそういった積み重ねの歴史ではあるのかもしれないが。
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「現代思想の源流」となった4人の思想家を取り上げて、彼らの思想がそれに続く思想家たちにどのようなインパクトを与えたのか、また、今日あらためて彼らの仕事を読みなおす意義はどこにあるのかが、執筆者自身の見解を交えつつ論じられている。 今村仁司は、ドイツ観念論などの哲学の「外部」を「...
「現代思想の源流」となった4人の思想家を取り上げて、彼らの思想がそれに続く思想家たちにどのようなインパクトを与えたのか、また、今日あらためて彼らの仕事を読みなおす意義はどこにあるのかが、執筆者自身の見解を交えつつ論じられている。 今村仁司は、ドイツ観念論などの哲学の「外部」を「指差し」する批判的役割こそが、マルクスの「唯物論」のもっとも重要なポイントだと主張する。こうした観点から見るとき、俗流マルクス主義の経済的決定論のみならず、ルカーチやサルトルの人間主義的マルクス主義も、あるべき人間の姿を観念論的に思い描いているという批判を免れない。 ニーチェを論じる三島憲一は、19世紀から20世紀にかけてのドイツ精神史に関する幅広い知見を披瀝しつつ、ニーチェの思想にさまざまな思潮が流れ込むと同時に、さまざまな思潮がそこから流れ出ていることを明らかにする。だが、そのことがただちにニーチェの思想のアクチュアルな意義を証明することにはならない。現代における不透明な時代経験を「力への意志」や「永遠回帰」といった哲学的キャッチ・フレーズでなで斬りにするニーチェの言説から、左右両極にわたるさまざまな教訓を引き出すことが可能だということにすぎない。こうした批判を展開した上で、ベンヤミンによるニーチェの継承の仕方には特別な位置づけが与えられると三島は考えている。そこには、時代の神話を批判したはずのニーチェ自身が、新たな神話を作り上げてしまったことに対する鋭い批判がある。 鷲田清一は、デカルトに始まる近代的コギトを解体したフロイトの仕事の意義を解説している。私たちの意識の背後にある「無意識」は、そのままの仕方で意識にもたらすことはできない。それゆえ、無意識を読み解く精神分析という営みは、「主体の系譜学」という意義を持つ。 野家啓一は、デカルト主義者として徹底的な還元を押し進めながら、晩年にはもはや還元することのできない「生活地平」へと至りついたフッサールを、モダンとポストモダンの境界に立つ哲学者として論じている。
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