大江健三郎小説 の商品レビュー
うーん、凄まじかった。すごいな、大江健三郎。さすがだな。 正直、少年たちが出てくるまでの100ページはかなり厳しかった。読み進めるうちにラリホーくらう感じで、なんとかページ数を数えながら読んでいた。これが200ページ続いたら諦めてしまおうかと思っていたらだんだんおもしろくな...
うーん、凄まじかった。すごいな、大江健三郎。さすがだな。 正直、少年たちが出てくるまでの100ページはかなり厳しかった。読み進めるうちにラリホーくらう感じで、なんとかページ数を数えながら読んでいた。これが200ページ続いたら諦めてしまおうかと思っていたらだんだんおもしろくなったので救われた。 鮮烈なイメージと現実の状況を混濁させながら展開していく物語の吸引力ったらなく、変に陽気な印象を持つキャラクターたちと陰惨な印象を与える文章のミスマッチ(ではないんやけど、適切な言葉が思いつかない)が恐ろしいくらいにはまっている。 破滅に向かって加速する物語のなかで、各自の立ち居地が明らかになっていく。キャラクターの底が浮き彫りになっていくにつれて、なぜか世界の全体像までが透けてくる。ものすごく小さな世界の話にすぎないのに、ペシミスティックな虚妄に侵された人々が、それを惑星レベルに捨象してしまう。 人類の最後でさえ乗り越えるために作られたシェルターのなかで、しかし洪水におぼれていく勇魚の最後は、ちょっと他に類がないくらいに圧倒的な終局を覚悟させる。結局、望んだもの、目指したもの、自覚していたものでさえなく、人間のひとりとして溺れる魂の叫びが「すべてよし」だというのは、こらえようもなく破滅的だと思った。 なんとも表現のしようがないけれど、これはたしかな傑作だった。
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