陸軍良識派の研究 の商品レビュー
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軍人、特に昭和期の陸軍軍人の後世の評価は、概ね否定的なものが多い。 それは、武断的で独善的な振る舞い、そして政治や外交に容喙して国益を損ねたことにある。 そういう中で「良識派」という評価に値する軍人は、何が違うのか?著者は「軍人以外と、教養や歴史観を踏まえて議論が出来る」軍人と定義して10人の生き様を描いている。 それぞれの評価(特に武藤章)について異論はあるだろうが、それはそれぞれの歴史観や人生観に拠るのでここでは論じないが、第2章の「吉田茂が見た昭和陸軍論」の中にある以下の一文は、非常に頷ける。 『「人命尊重」という御旗によってなしくずしに生の解体が進み、軍事を考えることを放棄したがゆえに歴史の内実やナショナリズムや文化や伝統について思いをめぐらせる能力を失ってしまった。たとえば、軍事を批判したり肯定したりする能力を持たなかったツケは、いじめという教育問題からPKO問題まで、はてはオウム問題までも一過性の出来事としてやりすごすほど、この社会は鈍感になっていることで証明されている。』 と論じて慨嘆している。 この一説は、良識派云々とは直接関係ないが、陸軍軍人を一絡げに論する風潮や、軍事そのものを忌避する議論に対して警鐘を鳴らしているように思えてならないのだ。
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