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一握の塵 の商品レビュー

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2022/04/14
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1934年発表で、原題は「A Handful of Dust」。自分の邸宅と伝統を愛するトニィ・ラーストと、ロンドンでの華やかな生活に憧れる妻のブレンダ。そんな二人の心のすれ違いを描く作品で、(少なくとも前半は)なんとも物悲しい雰囲気が漂っている。それでも、ウォーは随所にブラックでシュールなユーモアをはさみ込んでくる。 たとえばこんな場面がある。事故で息子を亡くしたトニィは、ブレンダの帰りを館で待っているが、気が動転して落ち着かない。その場に居合わせたラタリィ夫人は、気を紛らわせようとトランプゲームを提案する。しかし、トニィは「動物あわせ」というゲームしか知らない。それは、お互いカードを一枚ずつ出し、数字が同じなら動物の鳴きまねをするというもの。「ワンワン」、「コッコッコー」と二人がゲームに興じていると、運悪く執事に見られてしまう。退室した執事はほかの使用人たちにこう漏らす。 「牝鶏の鳴きまねなんかしておられるんだから。階上には坊っちゃまの亡骸があるっていうのに」 (p.173) 悲しみと可笑しさが入り混じった(そしてゾッとする結末をむかえる)傑作なのだけど、邦訳は絶版になっているので、図書館で借りるくらいしか読む方法がないのが残念。

Posted byブクログ