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現代法の透視図 の商品レビュー

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2015/09/09

『仮想の近代』に続く論文集。全体として、ルーマンに代表されるシステム理論が法学に対して投げかける問題提起の意味を、ノルベルト・ボルツなどドイツにおけるポストモダン思想の助けを借りつつ解明することが導きの糸となっている。その上で、原子炉建設や高度情報化社会の形成が立法・行政・司法の...

『仮想の近代』に続く論文集。全体として、ルーマンに代表されるシステム理論が法学に対して投げかける問題提起の意味を、ノルベルト・ボルツなどドイツにおけるポストモダン思想の助けを借りつつ解明することが導きの糸となっている。その上で、原子炉建設や高度情報化社会の形成が立法・行政・司法の近代的な役割理解を無効化し始めているのではないかという見立てのもとで、その中でもある種の「倫理」を形成できるのではないか、そしてそのプロジェクトは近代的秩序の仮想性の自覚がなければ果たせないのではないかといった、現代社会に対する診断が示唆されている。第二論文「科学技術の水準と裁判」などは、法と科学という近年よく議論されるテーマについても一定の見通しを与える論文だと思われるし、各論文とも著者が自家薬籠中の物としている近代法史への洞察から現代社会理論の展開まで多様な内容を含んでおり、極めて示唆に富む。

Posted byブクログ