再生の雑木林から の商品レビュー
「雑木林」とか「里山」とか簡単に言うけど、つまるところそれは何なのか。 著者は言う。 まったく自然のままの原生林と違って、人間が適度に手を掛けることによって樹床に太陽の光が入り、さまざまな草木が芽吹き、虫が集まり、鳥や獣がやって来る。生物の多様性が確保される。 人々にとっては、...
「雑木林」とか「里山」とか簡単に言うけど、つまるところそれは何なのか。 著者は言う。 まったく自然のままの原生林と違って、人間が適度に手を掛けることによって樹床に太陽の光が入り、さまざまな草木が芽吹き、虫が集まり、鳥や獣がやって来る。生物の多様性が確保される。 人々にとっては、かつて重要なエネルギー源である薪炭を取るための場であり、いまやそこに溢れる生命の気配や鳥のさえずりに呼び寄せられ、癒やされ、遊び、学ぶ場なのである。 それはすなわち、人の手が入り、人が身近に利用するための林を言うのである。 著者は森林研究者であり、樹木図鑑なども執筆する泰斗。そのかたわら、雑木林の再生と有効活用に取り組む市民ボランティアのリーダーを務める。そうやって文字通りの草の根活動で雑木林を守り、楽しむことの重要性を説く。 薪炭から化石燃料に人間のエネルギー源が大きく変わったのを機に、雑木林の多くはうち捨てられ荒廃した。この本が書かれたのは、そうした雑木林を見直す機運が高まり、著者が取り組むようなボランティア活動が盛んになり始めた頃だという。 それから約20年、木々が育つにはまだ十分な時間ではないだろう。雑木林の再生とは、言えば一言だけど、実に息の長い活動なのである。
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