ジャコメッティ の商品レビュー
仕事に命を懸けるということがどういうことか、この本を読むとわかる。全神経を研ぎ澄ませて画題と向き合い、日々歓喜と絶望を繰り返し、破壊のなかに微かな創造を感じ、最後は真っ白な画架で終える。本来芸術家しか解りえぬ生みの苦しみが伝わってくるようだ。そうしたジャコメッティ氏であるから『歩...
仕事に命を懸けるということがどういうことか、この本を読むとわかる。全神経を研ぎ澄ませて画題と向き合い、日々歓喜と絶望を繰り返し、破壊のなかに微かな創造を感じ、最後は真っ白な画架で終える。本来芸術家しか解りえぬ生みの苦しみが伝わってくるようだ。そうしたジャコメッティ氏であるから『歩く男』のような芯を捉えた独創的で特徴的な彫刻が創り出せたのであろう。 本書の作者である矢内原伊作氏は1956年から1961年をパリで過ごし、ジャコメッティ氏のモデルを務めた人物である。情緒不安定気味な氏と根気強く対話し創作姿勢に強く理解を示し親和していく姿が印象的だ。ところどころでサルトルなど超大物の名前が登場するのに驚かされる。 Ⅳ章の『ジャコメッティについての日記・手帖』は相当のジャコメッティ好きでないと辛いが、全体を通して「真の芸術家」「本当の仕事」の魂を感じることができる。
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国立新美術館ジャコメッティ展を見て、彼に興味を持ち読みました。 ジャコメッティの人間観察、リアリティを求める姿が矢内原伊作の目を通して語られています。
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アーティスト、ジャコメッティへの愛情、敬意に溢れる名著です。ジャコメッティの奇人ぶりには随分と笑わせてもらえました。
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彫刻家ジャコメッティに絵のモデルを頼まれた、哲学者矢内原伊作が彼との付き合いを文章、手紙、メモに残した記録を再編集した本。 フランス留学中に著者は、高名なジャコメッティにぜひデッサンのモデルになってくれと懇願される。二ヶ月のあいだ、彼のアトリエで椅子に座って、素描すること6時間以...
彫刻家ジャコメッティに絵のモデルを頼まれた、哲学者矢内原伊作が彼との付き合いを文章、手紙、メモに残した記録を再編集した本。 フランス留学中に著者は、高名なジャコメッティにぜひデッサンのモデルになってくれと懇願される。二ヶ月のあいだ、彼のアトリエで椅子に座って、素描すること6時間以上を毎日かかさない。真正面から見た顔を、見て書くという単純に思えることを執拗に繰り返し、そのたびに絶望の声や叫びをあげるジャコメッティ……。彼の芸術に共感する著者だが数週間かけたせっかくの絵を平気に壊したり自分の才能に絶望する呪詛にうんざりする。すでに成功した芸術家なのだが徹底的な仕事を日々行い、それに付き合う著者と、目指すものにまだ到達できないことへの誠実さと絶望の毎日が感動的だ。本物の芸術家の日々の仕事と考え方を垣間見れる。 留学のあとでも、ジャコメッティからの頼みで休暇を利用してモデルとして渡仏していたとのこと。旅費などはジャコメッティ持ちで。 図書館で借りたが、改めて買おうと思ったが中古でもけっこう高い。定価が5000円するのか…… だけどその価値はある本だ。
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私の心の書です。これを読んでジャコメッティのことが好きになりました。矢内原伊作の感じ方、物事の捉え方、文章が好きです。
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