お金の思い出 の商品レビュー
漫画家の若い頃のエッセイです。100円に泣いたり、持ち金が1円足りずに買い物できなかったりなど、貧乏生活のエピソードが続いており(失礼ながら)笑えますが、新宿の高層ビルに向かって「ジョートーじゃんか」と捨てゼリフを吐いたり、麻雀に勝った時はビール1本を頼んだもいいんだと考えて喜ん...
漫画家の若い頃のエッセイです。100円に泣いたり、持ち金が1円足りずに買い物できなかったりなど、貧乏生活のエピソードが続いており(失礼ながら)笑えますが、新宿の高層ビルに向かって「ジョートーじゃんか」と捨てゼリフを吐いたり、麻雀に勝った時はビール1本を頼んだもいいんだと考えて喜んだりなど、本人もそれを楽しんでいる(懐かしんでいる)かのように描かれているところが、痛快です。 また、若い頃には悩んだり苦労したりすることはあるわけですが、そうしたくだりが描写的に書かれている部分がいくつかあり、印象に残りました。夢中で漫画家になることだけを目指していた著者が、友人に「だからさあ、何か描きたいものを持って生きるってことの方が重要なんじゃないの。漫画家になれるかなれないかなんてことよりもさあ」と言われる場面、結婚して経済的な心配もなくマンガを描いている自分と東京でマンガを描き続ける自分のどちらを選ぶか悩む場面などは、情景が目に浮かぶように著者の世界に引き込まれてしまいます。 しかし、最後に父親からの電話の話や、引っ越さざるを得なかったときに飼い犬を連れて行けなかった話を持ってくるなど、本の構成が憎らしいほどうまい。
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