源氏供養(下) の商品レビュー
私にとって、非常に示唆の多い内容だった。 特に六条院について。 光源氏の権力の象徴とされる六条院だが、 私にはとても不自然で、いかがわしい空間に思えた。 季節を配した構成はよいとして、 それに勝手に女君を配置してしまうのは 源氏にとってはプロデュースされた世界なのだろうが 女君...
私にとって、非常に示唆の多い内容だった。 特に六条院について。 光源氏の権力の象徴とされる六条院だが、 私にはとても不自然で、いかがわしい空間に思えた。 季節を配した構成はよいとして、 それに勝手に女君を配置してしまうのは 源氏にとってはプロデュースされた世界なのだろうが 女君にとっては、あまりに押しつけがましく 息苦しかったのではないか、と感じたからだ。 しかも、似合う着物さえ、源氏が勝手に選んでいる。 源氏を置いて出ていけるような 確固とした後ろ盾のある女君は一人もいないのだから 源氏に従うしかないという状態ではあるが。 こんな六条院を、「女のための養老院」だと 橋本治は書いている。 光源氏は、当時の男性とは全く異なって、 女性を大切にするフェミニストであり、 性愛的な魅力がなくなった女性も捨てることなく 人間として、友人として、大切にする。 その実現が六条院だ、という。 (紫式部は「殿の骨董趣味」などとすら書いている。) ほとんど用済みというような、空蝉や末摘花でさえ、 二条院の東院でお世話している源氏。 玉鬘を六条院に迎えて、 世間の男たちが騒ぐのを見たい、という源氏の気持ちも 絢爛豪華な六条院に若い女性がいなかったせいだろう。 なるほど。 確かに、老いた女性を最後まで世話するのなら イメージする季節や着物を選ぶくらいは許されるかも。 それにしても、平安時代は、なんと生きにくいのだろう 特に女性にとって、自由なんて存在しないみたい。 雀の子を追って走ってきた幼い姫君は その後、走るどころか、立つことさえあまりなくなる。 豪華な重い衣装を背負って、ただ待ち続けるのだろうか
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窯変源氏物語は4年、丸3年は軽井沢の中央公論社山荘に籠って執筆した力作。平安時代の特殊性、こう考えてここをこう創作した等制作過程裏話が山盛り。 何もすることなくじっとしている生きた財産・姫を媒介とした男達の人間関係が窯変の視点。 父も兄も「男はみんな女の前では『男』となる時代」に...
窯変源氏物語は4年、丸3年は軽井沢の中央公論社山荘に籠って執筆した力作。平安時代の特殊性、こう考えてここをこう創作した等制作過程裏話が山盛り。 何もすることなくじっとしている生きた財産・姫を媒介とした男達の人間関係が窯変の視点。 父も兄も「男はみんな女の前では『男』となる時代」にあって、気の休まらない姫が 「お願いだから、少し静かにしてほしい」 と思う時代で「拒む女」の小説が生まれた。 見ず知らずの男が突然来て、結婚するかどうか答えを求めてきても答えようもない。男のほうは散々思いを熟成させてきているだけに恐ろしい。 千年後、女も自由に出歩ける時代になったことは進歩、姫にとっては夢の世界だった
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「源氏供養」というタイトルは中世に源氏物語を書いた紫式部の罪障を供養する法会からとっています。橋本治さんは馴染みのない古典を親しみやすく解説してくれる貴重な啓蒙家ですが、「源氏物語」については(私にとっては)わかりやすくはありませんでした。琴線に触れる解釈が少なかったのは残念です...
「源氏供養」というタイトルは中世に源氏物語を書いた紫式部の罪障を供養する法会からとっています。橋本治さんは馴染みのない古典を親しみやすく解説してくれる貴重な啓蒙家ですが、「源氏物語」については(私にとっては)わかりやすくはありませんでした。琴線に触れる解釈が少なかったのは残念です。もう少し、理解が深まれば彼の言うこともわかる部分が増えるのでしょうね。
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下巻では、自我をもたない「空洞」としての源氏の姿が執拗に描かれる、六条の院建設以降の物語や、その源氏に見初められることで居場所を得たものの、幸せにはなれなかった女たちの生涯についての、より突っ込んだ考察が展開されています。 筑紫の田舎から都にやってきて、やがてこの世の繁栄を謳歌...
下巻では、自我をもたない「空洞」としての源氏の姿が執拗に描かれる、六条の院建設以降の物語や、その源氏に見初められることで居場所を得たものの、幸せにはなれなかった女たちの生涯についての、より突っ込んだ考察が展開されています。 筑紫の田舎から都にやってきて、やがてこの世の繁栄を謳歌する源氏の養女となるというシンデレラ・ストーリーを歩んだ玉鬘の生涯は、親子を始めとする血筋の関係と、男女の関係という2つの関係を通じてしか、生きることができなかった当時の女性の姿を浮き彫りにします。また、少年のように走り出す幼い少女だった紫の上は、源氏に見初められてやがて彼の最愛の人になりながら、自分自身の生き方を獲得することができなかったことに、著者は眼を向けます。そして、源氏の死後、紫式部は、薫と匂宮の求婚を拒絶して最後に尼になってしまう浮舟の物語を始めます。 著者は、シンデレラ・ストーリーの「外部」が存在しなかった1000年も前に、こうした物語を作り出した紫式部という作者に讃嘆するとともに、『源氏物語』を現代に読むということは、こうした紫式部の噛みしめた孤独を理解することだと語っています。
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源氏と息子の夕霧の関係について、かなり突っ込んで書かれてあります。私自身、まだそこまで読み進めていないので「なるほど…そんなお楽しみが」と今から楽しみです(不純ですみません)。源氏が真に愛した人が…意外でした。
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上下巻読みました。橋本源氏ワールド全開です。「あー、こういう読み方もあったのね」と思ってしまう。そして「確かにあるかも」とも思うのです。
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