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思い川・枯木のある風景・蔵の中 の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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「そして私は質屋に行…

「そして私は質屋に行こうと思い立ちました」という有名な書き出しから始まる「蔵の中」は、私小説を越えた私小説の傑作。

文庫OFF

近松秋江がモデルの「…

近松秋江がモデルの「蔵の中」。大変ユーモアに溢れた作品

文庫OFF

ゴーゴリの影響をうけ…

ゴーゴリの影響をうける著者の『蔵の中』は可笑しくておもしろい!!

文庫OFF

2024/01/27

収録作品は宇野浩二の代表作で、趣の異なる3作品だった。「思い川」は作家と芸妓の30年に及ぶプラトニックな恋愛小説。心情描写が少ないが2人の心の通う様が伝わってきた。「蔵の中」は書き出し一文だけで引き込まれる。解説と作家紹介にかなり助けれ、良い意味で難儀な読書体験となった。

Posted byブクログ

2023/07/19

伊藤整の「小説の方法」で「蔵の中」が紹介されていたので読んでみた。 「蔵の中」は出世作と言われているらしいが、今風に言うと自虐っぽく、一人漫談のような語り口で、進んでいくが、それに似合わず、クライマックスではこんな場所でこんなに幻想的なシーンが描けるんかと前衛的な印象さえもたせる...

伊藤整の「小説の方法」で「蔵の中」が紹介されていたので読んでみた。 「蔵の中」は出世作と言われているらしいが、今風に言うと自虐っぽく、一人漫談のような語り口で、進んでいくが、それに似合わず、クライマックスではこんな場所でこんなに幻想的なシーンが描けるんかと前衛的な印象さえもたせる。 私はそれよりも「思い川」が気に入った。 「浮雲」と併読していたので最初登場人物や筋を整理するのに苦労したが、途中からはどんどん引き込まれた。筋のうねりやギャップで惹きつけるのではなく、美しいものを美しく見せるという王道で持っていかれる。 中でも私はこの物語の淀みが素晴らしく美しいと思う。普通はすじが停滞すると退屈になるが、この物語の淀みは濁りを含まず、むしろ底まで透き通らせて見せる。ゆったりと海へ向かう川の流れのように二人の思いはよりそうて流れてゆく。 てなところか。

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2018/05/16

「思い川」 普通なら私はこういう小説を好きになることはないが、この小説は特別だ。いつもなら忌み嫌う恋愛要素に感動しているのだ。この小説を読むことでなぜか自分の知らなかった一面を知ることとなった。

Posted byブクログ

2013/01/09

芥川龍之介「或阿呆の一生」の中で「彼の友人は発狂した」と紹介される この発狂した友人というのが宇野浩二なんだそうだ 山川直人「澄江堂主人」では、たいへん仲のよい二人として描かれてるが 人妻に手を出して神経をおかしくした芥川にくらべ 芸者との不倫づきあいを堂々と小説のネタにする宇野...

芥川龍之介「或阿呆の一生」の中で「彼の友人は発狂した」と紹介される この発狂した友人というのが宇野浩二なんだそうだ 山川直人「澄江堂主人」では、たいへん仲のよい二人として描かれてるが 人妻に手を出して神経をおかしくした芥川にくらべ 芸者との不倫づきあいを堂々と小説のネタにする宇野のずぶとさは まったく正反対の資質であるように思える ちなみに、芥川の死後、宇野の狂気は快癒している 「思い川」 関東大震災のあった大正12年から、敗戦の昭和20年まで 20年以上にもわたる不倫恋愛を書いたものである それは、恋愛を生業とする芸者と、恋愛に小説のネタを求める作家の いってみれば「働く男女のホモソーシャル」的恋愛であり 一種の利害関係を成立させてもいるわけだ そこにこの恋愛のイノセント性を垣間見る一方、 不倫関係に甘えた言い訳を添えているだけじゃないか という気はしないでもない ただし、淡々とした文章の運びが、読み手に嫌味を感じさせないだろう そしてまた、この小説の要点はそういう部分だけにとどまらない ・・・年月とともに二人の関係が変化していくことはまぬがれず 特に、芸者として海千山千を相手せねばならぬ女にとっては 恋の一途さに殉じること自体たいへんな試練なのであるが これを横目に時間をやりすごしていく作家は それによって自らの「書けなくなる問題」をも乗り越えていくことになる これは、「或阿呆の一生」へ向けた、宇野なりの返答にもなっていると思う なお、この小説には芥川の死についても書かれているのだが 芥川に「発狂した友人」と呼ばれた人が、 芥川の神経衰弱ぶりを子細に観察している様は 想像しただけで吹き出してしまうおかしみを持っていると思う 「枯木のある風景」 絵画の世界に題材をとっているものの 死んだ画家の「仮面」について思いを巡らせるくだりは やはり芥川龍之介に対する批判と見るべきだろう 人間が社会的な生き物である以上、 仮面を外した者は、人間をやめねばならないのかもしれぬ たとえそれが、屈辱にまみれた道化の仮面であったとしてもだ だけど、彼を愛してくれていた人々のために 仮面をかぶり続けるという選択はなかったのか 「蔵の中」 主人公は、愛着ある着物も蒲団もぜんぶ質屋に入れてしまう それは、遊ぶ金が欲しいためである にもかかわらず、愛着を断ちきれぬあまりに ずうずうしくも質屋に頼み込んで みずから蔵の中の着物や蒲団を虫干しするという なんだかなあ…なお話 なんというか、天然素材の味です

Posted byブクログ

2012/06/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

西区信濃橋交差点の北西角の植え込みに「信濃橋洋画研究所跡」の碑石が建立されている。1923年(大正12)、小出楢重が「大阪あたりに野党系の洋画研究所があってもいいのではないか」と、黒田重太郎・国枝金三 ・鍋井克之に呼びかけて設立したのが信濃橋研究所である。小出楢重は、文展に何度も落選するなど不遇の時代が長かったが、1919年≪Nの家族≫で第6回二科展・樗牛賞を受賞し、新出画家としての地位を確立していた。同研究所では小出が直接指導にあたるということで、若い画学生が作品を持ち込んでは寸評を請いに押しかけた。勢い込んで設立した小出だが、「じぶんの力量以下の絵を見ることは、まるで地獄行きの切符を帽子にはさんでいるようだ」と困り果てたという。1926(大正15)年芦屋にアトリエを構えたが、1930(昭和5)年より身体の不調を訴え、≪枯木のある風景≫を絶筆として芦屋に没した。  この小出との交流を通して芸術の厳しさを描いたのが宇野浩二『枯れ木のある風景』である。  作品は、紀元節の朝主人公・島木が奈良に写生に行く場面から始まる。高畠で写生を始めた島木だが、島木の心は古泉(小出楢重がモデル)のことを思いつづけていた。まず、寺町のある寺に間借りして勉強していた古泉を訪問した時のことを思いだす。東京の美術学校時代、島木は古泉がほとんど誰とも話をしないので、彼は交際ぎらいの拗ね者であろうと思っていた。ところが、学校を卒業して美術学校の友人に合って、古泉は無口どころか一時間でも無駄口をたたいて人を笑わす奴だというではないか。それを聞いた島木はそれを確かめるため古泉を訪問したのだ、「昔の君は素気なかったと」島木がいうと、「君、あれは神経衰弱というやつやったんや」と答えた。その時、島木は古泉の妙に落ち着いた物のいいぶりから、これは只者ではないという印象を受けたのだった。その訪問以後島木は古泉に興味を持ち、共同で浪速洋画研究所を創設するまでになった。  次に、島木は去年の10月に古泉を訪問した時のことを回想する。島木はその時、彼のアトリエでいつもの古泉にない大胆不敵な構図の2枚の未完成図「裸婦写生図」と「枯れ木のある風景」を見つける。古泉は、今までの写実一点張りは、『当分打ち切りにして、これからは、芭蕉風に写実と空想の混合酒(カクテエル)を試みてはみようと思うんや』。しょぼしょぼまたたく目で語った。その目は古泉が健康を害した2年目前からであったが、不思議に作品の出来映えはますます冴えてきていた。  島木はそれまでは古泉を、その剽軽な言葉から推してただ剽軽な性格な人と思っていたが、いつとはなしにそのしょぼしょぼした目まで油断がならないぞと思うようになった。  島木が奈良に行くと聞いた研究所の講師八田、入江も奈良に写生に出かけ、彼らも古泉が描く裸婦について論議していた。と、その時「古泉死す」の電報が来て、あわてて奈良駅に駆けつけた二人は、偶然島木と出会い、三人は古泉の家に向かうのだった……。  作者の宇野浩二は1891年福岡産まれ。4歳の時、父親が死亡したため大阪に移転。1919年、「文書世界」に発表した『蔵の中』で一躍、文壇に認められる。しかし、1927年、精神に変調をきたし、広津和郎、芥川龍之介に世話になっていたが、結局斉藤茂吉の紹介で小峰病院に入院。病状は軽く70日ぐらいで退院したが、その入院中に芥川は自殺してしまっていた。  時代への漠然とした不安。その不安は宇野の精神を病ませ、芥川を自死に追い込んだ。そして、その不安は小出(彼は優秀な随筆家でもあった)も共有していた。小出は、その不安を「枯れ木」で象徴させ「枯れ木のある風景」を描いた。宇野は、彼の死と同時に小峰病院に再入院する。1933年、宇野浩二は、「改造」8年1月号に「枯木のある風景」を発表して、文壇に復帰。  彼は最後にこう書いている。『島木新吉は、亡友の遺骸に黙祷してから、ずいぶん長い間、その二つの絵を、見くらべ、見つめた。島木は、しかし、「枯れ木のある風景」にも異常な敬意をはらったが、「裸婦写生図」の方により多くの敬意をはらった』

Posted byブクログ

2012/06/21

杉井ギサブロー監督のオススメ作品 「蔵の中」 杉井監督レビュー 淡々とした日常の生活風景が宇野浩二の手にかかると文学世界として描かれるのだと、不思議な思いをさせてくれた作品。何もないゆるさが良い。

Posted byブクログ