人類の星の時間 の商品レビュー
「本当に歴史的な、人類の星の時間というべきひととき」という紹介文に惹かれ、図書館で探して読んだ。しかし残念ながら全くおもしろくなかった。その「瞬間」の描き方がどうにもいまいち。なぜこれが傑作と言われるのか解らない。30ページ程度の歴史短編が12編という構成は良いし、題材の選択も良...
「本当に歴史的な、人類の星の時間というべきひととき」という紹介文に惹かれ、図書館で探して読んだ。しかし残念ながら全くおもしろくなかった。その「瞬間」の描き方がどうにもいまいち。なぜこれが傑作と言われるのか解らない。30ページ程度の歴史短編が12編という構成は良いし、題材の選択も良い。欧米や芸術家に偏るのも構わない。しかし読んでいて退屈で面白くなかった。 一編挙げるなら「大洋を渡った最初のことば」。1857~1866年の米国人サイラス・フィールドによる大西洋海底通信ケーブル敷設事業の話。こんな大それたぶっ飛んだ事業ができたということに驚き。2台の軍艦でケーブル通信しながら敷設していくのがチェックも兼ねててなるほどと思った。というわけで題材はよい。しかし描き方はいまいちで、タイトルの「最初のことば」があるわけでもないし、うまさを感じなかった。
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伝記作家としても名高い著者だけにトルストイやドストエフスキー、ゲーテといった高名な文人に題材を取ったものが目立つ。(人類の歴史に輝かしい跡を残した、とまで言えるかは疑問だが…) 一方でアメリカ大陸西岸の「発見」やコンスタンチノープルの陥落、電信線の大西洋横断など、確かにその後の...
伝記作家としても名高い著者だけにトルストイやドストエフスキー、ゲーテといった高名な文人に題材を取ったものが目立つ。(人類の歴史に輝かしい跡を残した、とまで言えるかは疑問だが…) 一方でアメリカ大陸西岸の「発見」やコンスタンチノープルの陥落、電信線の大西洋横断など、確かにその後の人類史に大きな影響があった出来事の詳細を扱った部分は得るところが大きい。
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久々に整った文章を読んだ。運命というものの不思議さに思いを馳せる。ツヴァイクは1942年に「私の精神の故国ヨーロッパは今や自滅した」と遺書を残して自滅したそうだけど、現代に生まれていたらどうなってただろう。多分一目見たら二目見たくなくて自殺するくらいだろう
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人類の歴史に輝く星のような瞬間を切り取る12の物語。 1. バルボアの太平洋発見 2. メフメト2世によるコンスタンチノープル陥落 3. ヘンデルのメサイヤ作曲 4. ラ・マルセイエーズの誕生 5. ウォータールーの戦いでのナポレオンの部下グルシーの判断 6. ゲーテ74歳の時の...
人類の歴史に輝く星のような瞬間を切り取る12の物語。 1. バルボアの太平洋発見 2. メフメト2世によるコンスタンチノープル陥落 3. ヘンデルのメサイヤ作曲 4. ラ・マルセイエーズの誕生 5. ウォータールーの戦いでのナポレオンの部下グルシーの判断 6. ゲーテ74歳の時の19歳の娘への叶わぬ恋を纏めた詩とそこからのゲーテの復活 7. ジョン・サッターとゴールドラッシュ 8. ドストエフスキーの死刑直前での恩赦 9. 大西洋横断海中ケーブルの敷設 10. トルストイの死への家出 11. スコット隊の南極点探検の悲劇 12. レーニンの封印列車 1927年の最初の出版時はこのうち5,6,7,8,10の五篇で出版され、1943年に12篇に拡大されてまとめられた。 瞬間瞬間の性質は多岐にわたり、時代も色々。必ずしも歴史的に正確ではない点も今日の目から見るとあるかもしれないが、歴史的な瞬間を形作った人々に対する暖かな視点が共通する。個人的には人類(ヨーロッパ視点ではあるかもしれないが)の地平を広げるターニングポイントの瞬間を切り取った1,7,9,11が印象的だった。偉大な歴史的人物とまではならない人物がある意味での偶然や巡り合わせ、そして意志の力によって人類の歴史の転換点に立ち会う事がまさに「人類の星の時間Sternstunden der Menschheit」だ。
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「歴史の中でも人生の中でも、後から悔いてももはや取り逃した瞬間を取り返すことはできない。そしてただひとときの怠慢の結果をつぐなうには千年の歳月がかかる」 この本の中には12の歴史的な出来事が語られているが、冒頭で引用したフレーズが全てのストーリーに当てはまる。そして、それは数人...
「歴史の中でも人生の中でも、後から悔いてももはや取り逃した瞬間を取り返すことはできない。そしてただひとときの怠慢の結果をつぐなうには千年の歳月がかかる」 この本の中には12の歴史的な出来事が語られているが、冒頭で引用したフレーズが全てのストーリーに当てはまる。そして、それは数人の愚行のせいで現在も国益を損ない続けている日本の姿とも重なる。 歴史というのは個人の偶然と必然の快挙と偶然と必然の愚行で成り立っているのだということを改めて認識した。必然の愚行は始末が悪い。というのも、それが祖国の国益を損ねると知っていてやっているからだ。味方のふりをして自陣に居座り、背後から首を取ろうと狙っている輩からどうやって国を守ればいいか。永遠の課題である。 ナポレオンとグルシー ラ・マルセイエーズの作曲 コンスタンティノープルの攻略 太平洋の発見 ゴールドラッシュ この5つは一読の価値あり。
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名もなき凡夫から歴史的人物まで、その先の時代を決するような瞬間を描写した短編である。 人類には何でも「初めての瞬間」があったはずで、歴史に名を残しているか否かは別にして「初めて成し遂げた人」がいたはずである。最初に立ち上がった人、火を使った人、歌をうたった人、文字らしきものを書...
名もなき凡夫から歴史的人物まで、その先の時代を決するような瞬間を描写した短編である。 人類には何でも「初めての瞬間」があったはずで、歴史に名を残しているか否かは別にして「初めて成し遂げた人」がいたはずである。最初に立ち上がった人、火を使った人、歌をうたった人、文字らしきものを書いた人、神を作った人、地球を一周した人、南極に到達した人、大海に電線を引いた人、地下鉄を通した人、月に行った人…次は何をするのだろう。 初めての人が道を拓き、その後の人類の在り方を決定付けてきた。英雄の意志にかかった歴史もあれば、とるに足らない人物ととるに足らない事象がその歯車を動かした歴史もある。ほんの些細なきっかけが核となり、単なる時の連続から、その時代の結晶ともいえる何かが析出し、その時代を形作っていく。 もともと歴史があるわけではなく、個人の営みの積み重ねであったり、偶然の賜物により、歴史が織りなされていくという真実に思いが至る短編である。
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シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)は、オーストリアのユダヤ系の作家・評論家である。その歴史小説は評価が高く、『マリー・アントワネット』や『メアリー・スチュアート』等が有名である。 本書には12篇が収録されているが、1927年の初版は全5篇(本書の中の「ウォーターロー...
シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)は、オーストリアのユダヤ系の作家・評論家である。その歴史小説は評価が高く、『マリー・アントワネット』や『メアリー・スチュアート』等が有名である。 本書には12篇が収録されているが、1927年の初版は全5篇(本書の中の「ウォーターローの世界的瞬間/ナポレオン」、「マリーエンバートの悲歌/カルルスバートからヴァイマルへの途中のゲーテ」、「エルドラード(黄金郷)の発見/J.A.ズーター」、「壮烈な瞬間/ドストエフスキー」、「南極探検の闘い/スコット大佐」)で出版され、1943年の増補版で現在の全12篇(追加は「不滅の中への逃亡/太平洋の発見」、「ビザンチンの都を奪い取る」、「ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデルの復活」、「一と晩だけの天才/ラ・マルセイエーズの作曲」、「大洋をわたった最初のことば/サイラス.W.フィールド」、「神への逃走/レオ・トルストイの未完成の戯曲『光闇を照らす』への一つのエピローグ(終曲)」、「封印列車/レーニン」)となった。 邦題の『人類の星の時間』は、ドイツ語の原題『Sternstunden der Menschheit』の直訳であるが、著者はその題に込めた意味を、「序」の中で「時間を超えてつづく決定が、或る一定の日附の中に、或るひとときの中に、しばしばただ一分間の中に圧縮されるそんな劇的な緊密の時間、運命を孕むそんな時間は、個人の一生の中でも歴史の径路の中でも稀にしかない。こんな星の時間-私がそう名づけるのは、そんな時間は星のように光を放ってそして不易に、無常変転の闇の上に照るからであるが-こんな星の時間のいくつかを、私はここに、たがいにきわめて相違している時代と様相との中から挙げてみることをこころみた。」と述べている。 12のエピソードは、ナポレオン戦争の最後の戦いとなったウォーターロー(ワーテルロー)の戦いや、スコットとアムンセンの南極点到達を巡る競争など、有名な史実を描いたものから、ルジェ大尉によるラ・マルセイエーズの作曲の秘話のようにほとんど知られていないものまで、いずれも印象的な「星の時間」といえるのだが、これらの中には、必ずしも歴史に名を残す当事者の意志によらないもの、更には、神の悪戯としか言えないものさえ少なくないのである。 そして、本書が示してくれることは何だろうか、と思うと、それはおそらく、そうした数々の「星の時間」を含めて、世界は「史実」を積み重ねている(「歴史」とは、「史実」を、ある一面から見た因果関係で事後的に結び付け、説明したものであり、ここでいうのはあくまでも「史実」である)ということ、即ち、人類の物語は、当事者たちの意志のみで決定されるものではないということではないだろうか。 そうした意味で、歴史を見る目、歴史に対する考え方を変える一冊と言える。 (2020年4月了)
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ものすごくワクワクしながら読めて、とんでもなく面白い本。 後世に残る傑作や発見が生まれる瞬間であったり、歴史の転換点であったり、人類史において輝いたその“瞬間”を描いた伝記小説の短編集。 講談調にも似たツヴァイクの語り口と、格調高い訳文が相まって、知の高みへと連れて行かれるような...
ものすごくワクワクしながら読めて、とんでもなく面白い本。 後世に残る傑作や発見が生まれる瞬間であったり、歴史の転換点であったり、人類史において輝いたその“瞬間”を描いた伝記小説の短編集。 講談調にも似たツヴァイクの語り口と、格調高い訳文が相まって、知の高みへと連れて行かれるような興奮を覚えます。 特に好きだったのは『ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデルの復活』『エルドラードの発見』『大洋をわたった最初のことば』『南極探検の闘い』で、読んでいて魂が震えました。 中には事前、または事後に知識を仕入れた方がいいものもあり、仕入れると話の面白みや凄みがグッと立ちます。 ここまで人間の素晴らしさを歌い上げたツヴァイクが、この本を書いた10数年後、自らの命を絶っていることに何とも複雑な気持ちにはなりますが、ツヴァイクの描いた“星”が今もなお輝いていることは間違いありません。
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サイラス・W・フィールド、海底電信ケーブルを敷設した人。彼の凶器にも似た気概と勇気に感動して鳥肌が立った。 世界史を勉強していたのにも関わらず、まったくもって彼のことを知らなかった。 無論、彼だけでなく他の誰のことも知らなかったのだけど。教科書に太字で要約して記される言葉の裏に...
サイラス・W・フィールド、海底電信ケーブルを敷設した人。彼の凶器にも似た気概と勇気に感動して鳥肌が立った。 世界史を勉強していたのにも関わらず、まったくもって彼のことを知らなかった。 無論、彼だけでなく他の誰のことも知らなかったのだけど。教科書に太字で要約して記される言葉の裏に、その時代に居合わせた人々の壮大な物語があることに想像力が膨らみワクワクしました。 学校の先生もこんな風に教えてくれたら良かったのにな。 私としては、訳語が少々堅苦して読みづらかったのが残念でした。何度も挫折してしまったので笑
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歴史が輝いた瞬間、「人類の星の時間」をツヴァイクのすばらしい物語の力で描き出した本。 畏怖するもの、恐ろしいもの、感動するもの、そしてまずいずれもそのような評価を下す前にさきにただただ理解し、共感している。 12のどの話も精神に迫ってくるものがある。優劣つけがたいが、ヘンデル、...
歴史が輝いた瞬間、「人類の星の時間」をツヴァイクのすばらしい物語の力で描き出した本。 畏怖するもの、恐ろしいもの、感動するもの、そしてまずいずれもそのような評価を下す前にさきにただただ理解し、共感している。 12のどの話も精神に迫ってくるものがある。優劣つけがたいが、ヘンデル、ドストエフスキー、スコット大佐の南極探検はとりわけ心が震えた。
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