井上靖全集(第二十巻) の商品レビュー
この第二十巻には、三つの長篇「欅の木」「四角な船」「星と祭」が収録されている。合わせると八百ページにもおよび、まるで辞書のような厚さだ。 どの作品にも、共通して狂人が登場する。「欅の木」のけやき老人、「四角な船」の甍、「星と祭」大三浦。どの人物も、まるで何かに取り憑かれたかのよう...
この第二十巻には、三つの長篇「欅の木」「四角な船」「星と祭」が収録されている。合わせると八百ページにもおよび、まるで辞書のような厚さだ。 どの作品にも、共通して狂人が登場する。「欅の木」のけやき老人、「四角な船」の甍、「星と祭」大三浦。どの人物も、まるで何かに取り憑かれたかのように、それぞれのめり込んでいる。作者がこのような狂人を登場させたのは、狂人を通してしか語り得ない何かがあるからなのかもしれない。 あまり有名とは言いがたい三作だが、どことなく風格が漂うのは流石である。このような作家は現代ではあまりおるまいと思う。
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