お姫さまエッセイ 昭和マイラヴ の商品レビュー
【華族の自由研究:2】 「“個人の邸宅では東洋一”などといわれた駒場の邸に、私は本当に住んでいたのだろうか。―」 加賀百万石を継ぐお嬢様の生活はしかし、戦争を期に一転します。 華族は廃止、財産は没収されてしまうのです。斜陽族という言葉が流行りました。一般人も混乱する中、華族の人...
【華族の自由研究:2】 「“個人の邸宅では東洋一”などといわれた駒場の邸に、私は本当に住んでいたのだろうか。―」 加賀百万石を継ぐお嬢様の生活はしかし、戦争を期に一転します。 華族は廃止、財産は没収されてしまうのです。斜陽族という言葉が流行りました。一般人も混乱する中、華族の人たちは天国から地獄をみた思いをしたことでしょう。 しかし著者はここで負けません。「たかが戦争に負けたくらいで没落してたまるか!」という夫のひとことに「ご先祖様に申しわけがたたない」(p78)と奮起するのです。 * 読んで印象に残ったのは育ちの良さ、です。マナーや立居振舞、使用人に対するねぎらいも含め、幼いころから厳しく躾けられたこと、その精神が著者の奮起につながったのではと思わずにいられません そしてこの〈躾〉こそが、著者の生きる道を決定付けるのですから人生はわかりません。 * 最後に著者は「本来無一物」という禅の言葉で人生を回想します。 「私は昭和の戦乱期を生きて大敗北の痛手の中で、それまであると思っていた富も地位もすべてが煙のように虚空に消えるのを見た。 いや、それらはもともとなかったのだ。だから私は何の打撃も受けなかった。本当に。」 ― 大和撫子をみた思いがしました。 つづく
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