アルベマス の商品レビュー
折しも合衆国では新大…
折しも合衆国では新大統領が誕生、恐るべき破壊活動機関の存在を主張し、これを粛正すると宣言した。世界の歯車が狂い始める。『ヴァリス』の原型となり、著者の死後発表された傑作。
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VALISシリーズでは外伝的自伝的なこの先品が読みやすかった覚えがあったのでここから。 しかし1冊読んだら本編ヴァリス三部作も気になってしまったではないか。全部読み返すかどうするかなあ。。 ★★★ ある日ニコラス・ブレイディは神秘体験を得る。彼はそれを衛星からの指示と感じる。彼...
VALISシリーズでは外伝的自伝的なこの先品が読みやすかった覚えがあったのでここから。 しかし1冊読んだら本編ヴァリス三部作も気になってしまったではないか。全部読み返すかどうするかなあ。。 ★★★ ある日ニコラス・ブレイディは神秘体験を得る。彼はそれを衛星からの指示と感じる。彼が体験したかもしれないこと、やるべきことを伝え、彼を助けてくれるという。 ニコラスはその体験を巨大にして能動的な生ける情報システム、”VALIS”と名付ける。 ニコラスは親友のSF作家P・K・ディックに伝える。 P・K・ディックは、麻薬中毒者と思われ、さらにニコラスとの交流により政府の危険分子捜査官に目をつけられる。 ちょうど時の大統領フェリス・フレマントは、国家に対する破壊活動期間”アラムチェク”の存在を主張し、組織メンバーの壊滅のため、操作組織を作っていたのだ。さらにニコラスたちに信号を送る衛星の存在を突き止め、爆破を計画する。 フェリス・フレマントの作ろうとする社会とは。 ニコラスとP・K・ディックは世界へ真実を伝えられるのか… ★★★ 実際のP・K・ディックが麻薬と反社会活動者との関わりを疑われて当局に目をつけらた経歴を持っているのですが、それらを小説として昇華させる力もあったわけですね。 P・K・ディックはSFを書く理由を「現実に合わせられないから自分たちが生きられる世界を作る」とかなんとか語っていたと思うのですが(相当うろ覚え)、現実世界が間違っていて自分が合っていると思っていたわけではなく、現実に合わせられない自分が異端だとも分かっていた様子。 (以下ネタバレっぽくなります) P407~ ヴァリスの声を聞き行動したために倒された友人を語る主人公に対して、実際に現実で戦った人物の台詞。 【「天の父を信じたことで、連中はどこかへ行ったのか」やがてレオンがたずねた。「この世界じゃないかもしれないがね」私は言った。 「それなら、お前が聞きたくないかもしれないことを言わなきゃならないな。お前のアラムチェックの友だちがここにいたら、そいつらにも言ってやる必要がある。それじゃあ駄目なんだぞ。この世界でなきゃいけないんだ」レオンが険しい顔をして、きっぱりと言った。経験に裏打ちされた険しさだった。 「彼らは不死を得たんだ」私は言った「彼らがしたこと、いや、しようとして失敗したことのために、彼らは不死を授けられたんだ。彼らは今でも存在し、僕の友だちも存在する、これからもずっと」 「たとえお前に見えなくてもか」 「ああ」私は言った。「その通りだよ」 レオンが言った。 まずこの世界でやらなければならないんだぞ。他の世界でうまくいっても駄目なんだ」 (…中略…) 「それはな」レオンが続けた。「苦しんでいるのはこの世界だからだ、不正や監禁が横行しているのはこの世界だからだ。俺たちのように、俺たち二人のようにな。この世界に必要なんだぞ。それもいま」 (…中略…) 「お前が友達二人を愛していて、今寂しく思ってる気持ちはよく分かる。お前の友だちはどこかの空にいて、元気よく楽しそうに飛び回ってるのかもしれん。しかしお前や俺をはじめとする三十億の人間はそうじゃないし、変化が起こるまでは、こんな世界に満足しちゃいけないんだぞ。たとえ天に至高の父がいてもな。そいつはこの世界にいる俺たちに何かしてくれなきゃならない。それが真実だ。お前が真実を信じるなら、これが真実なんだ。過酷で不快な真実だ」】
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