折口信夫論 の商品レビュー
蒸し暑く湿り気すらも帯びた大気のなかで生温い風が頬をなで顔に髪にまとわりつく。不快の極みと思いつつも、どこかしら抗いがたく魅惑する折口信夫のエクリチュール。ただその魅力は、あくまでも「共感」の共同体に狎れあい凭れかかりあい溶け合うことによって得られる体のものだ。 「「お聞き及びか...
蒸し暑く湿り気すらも帯びた大気のなかで生温い風が頬をなで顔に髪にまとわりつく。不快の極みと思いつつも、どこかしら抗いがたく魅惑する折口信夫のエクリチュール。ただその魅力は、あくまでも「共感」の共同体に狎れあい凭れかかりあい溶け合うことによって得られる体のものだ。 「「お聞き及びかえ」と呟きながらみずから厚かましくにじり寄ってきて、暑苦しい布のようにこちらの?を覆ってしまう」このエクリチュールを前に、松浦寿輝は、それを外から裁断・評定するのではなく、「折口そのものの内部で、折口の言葉そのものに十分語らせつつ、折口から無限に遠ざかろうとする試みとして執筆」した。 折口の言葉で語られた本書は、ために、その共感の埒外に置かれた者を放逐するかのように、論旨を踏み迷わせる直感や即断が挿入されているかのようにも取れる。が、本書を一つの文学的なテクストとみなしたとき、理解が追い付かないところを差し置いても、非常に興味深く読むことができた。
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