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福沢諭吉と西欧思想 の商品レビュー

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2024/04/13

近代日本を代表する思想家である福沢諭吉が、西洋の諸思想をどのように受容したのかということを、彼の手沢本への書き込みや不審紙を調査することで解明した、文献学的な手法にもとづく研究書です。 本書で調査の対象とされているのは、福沢自身が読んだスペンサーの『社会学研究』、ブラックストン...

近代日本を代表する思想家である福沢諭吉が、西洋の諸思想をどのように受容したのかということを、彼の手沢本への書き込みや不審紙を調査することで解明した、文献学的な手法にもとづく研究書です。 本書で調査の対象とされているのは、福沢自身が読んだスペンサーの『社会学研究』、ブラックストンの『イングランド法釈義』、J・S・ミルの『功利主義』などです。それらの著作の内容を紹介するとともに、福沢が書き込んだと思われることばを読み解くことで、明治初期の日本の知識人が西洋の思想を受け入れていく現場にせまっています。とくに福沢の自然科学・社会科学についての理解や、文明史のとらえかた、「自由」の概念をめぐる諸問題について、上の著作を手がかりに検討がなされています。 こうした研究の目的として考えられるのは、ひとつには福沢の思想が形成されていくプロセスを明らかにすること、もうひとつにはいわゆる「文化接触」のドキュメントとして理解することなのでしょうが、本書は著者自身の問題関心はそれほど前面に押し出されておらず、おおむね基礎的な資料を提供するという態度から逸脱していないように感じました。その一方で、たとえば福沢の父・百助の師である帆足万里の、そのまた師であった三浦梅園の自然哲学が参照されていたりもします。福沢の議論の特色を浮き彫りにしようというねらいなのでしょうが、論証を進めていくときの「歩幅」が大きく変化することに、すこし戸惑いを感じます。

Posted byブクログ