大江健三郎がカバにもわかる本 の商品レビュー
大江健三郎がノーベル文学賞を取った少し後に出版されたもの 95年の3月だから阪神大震災以降、地下鉄サリン以前ということになる 全体的に、昭和の軽薄体を引きずりつつ 嘲笑的なニュアンスをにじませており いま読むとかなりキツイ けれどもさして的外れなことを書いてるわけではないので 概...
大江健三郎がノーベル文学賞を取った少し後に出版されたもの 95年の3月だから阪神大震災以降、地下鉄サリン以前ということになる 全体的に、昭和の軽薄体を引きずりつつ 嘲笑的なニュアンスをにじませており いま読むとかなりキツイ けれどもさして的外れなことを書いてるわけではないので 概要をつかむ分にはよいのではないか 「光の国のミスター・チルドレン」 ウルトラマンと怪獣 人間は、心の中にそれらふたつの観念を宿し、持て余す存在なのだ 大江が、ほんとうに現実と童話を混同している人だったならば 「破壊者ウルトラマン」は書けなかっただろう むしろ、自虐史観を童話の位置に貶めることで 怪獣たちを現実の「象徴」に奉ろうとしているのは 筆者である切通理作氏のほうではあるまいか しかし一方それはまた けして大江作品におけるテーマと矛盾するものではないのだった 三島由紀夫の切腹以前から 大江が、その作品世界において 天皇のコピーを作ろうとしていたことは明白である おそらく、それによって自立した個人の目覚めを促そうとしたのだろう しかし実際には ミニマムに切り取られた世界(例えば四国の森)と そこに住むミニマムな保守を大量コピーしたにすぎず それでこのように「世界まるごと幼稚化」などと エディプス的批判者からの追及を受けている この不毛さが、まさしく平成ですよ なんつってな
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