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日本への疑問 の商品レビュー

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2012/06/01

▼戦後日本は非常に実利主義的な外交を展開してきた。いかに敗戦から立ち直り、日本を再興させるか――後に「吉田ドクトリン」と称されるようになる、吉田茂のとった路線とは、大局的な見地から判断を下した、超現実主義的な選択であったと言えるだろう。 ▼しかし、存外に日本が“GOOD LOSE...

▼戦後日本は非常に実利主義的な外交を展開してきた。いかに敗戦から立ち直り、日本を再興させるか――後に「吉田ドクトリン」と称されるようになる、吉田茂のとった路線とは、大局的な見地から判断を下した、超現実主義的な選択であったと言えるだろう。 ▼しかし、存外に日本が“GOOD LOSER”として立ち振る舞い、あたかも冷戦の勝者であるかのような経済的成功を収めたことは、諸外国――特に、日本にとって“GOOD WINNER”であり続けてきたアメリカに〝義憤〟を抱かせ、脅威とまで見られる結果を招いた。 ▼筆者の言う「日本への疑問」とは、つまり、成長した日本の国家目的が未だ判然としない点にある。もっとも、〝失われる〟以前の日本にとっては成長こそが目的であり、そこで蓄えられた国力ももっぱらその再生産のために用いられたのであるから、目指すべき国際秩序像も、そのために発揮されるべき政治力の方向性も、定式化されてこなかったことは当然の帰結であったのだろう。 ▼既存の秩序から利されるのみならず、その秩序を維持、ないし望ましい秩序に改変していく必要性に迫られている現代の日本。そこでアメリカとの共闘が有益であると見ることに異論はないが、政治力を発揮するためにいかほどに軍事力が重要であるのかについては、なお詳細な検討が必要であろう。

Posted byブクログ