カウンセリングはなぜ効くのか の商品レビュー
1994年に厚生省が制度化を推し進めていた「医療心理士」の制度が、心理臨床の仕事を医師の下働きとして位置づけようとしていることに対して、専門職としてのカウンセラーの果たすべき役割について論じた本です。こうした事情のもとで書かれた本であり、緊急出版的な内容であることもあってか、議論...
1994年に厚生省が制度化を推し進めていた「医療心理士」の制度が、心理臨床の仕事を医師の下働きとして位置づけようとしていることに対して、専門職としてのカウンセラーの果たすべき役割について論じた本です。こうした事情のもとで書かれた本であり、緊急出版的な内容であることもあってか、議論に若干未整理なところも見られます。ユング心理学の立場に立つ著者の考えに全面的に賛同することはできないものの、その問題意識は十分に理解できるように感じました。 著者は、カウンセラーはクライアントを「好きにならなければならない」と、かなり大胆な言い回しを用いた主張をおこないます。とはいっても、それはカウンセラーとクライアントという、いわば「かけ代えのある」枠組みのなかでのみ成立する関係だと注釈が加えられます。それは、家族や恋人のように「個」としてのエロス的な関係ではなく、「種」ないし本能としての次元で、他者へとかかわっていこうとするクライアントのエロス的な欲求を満たすことによって、クライアントが未知の何者かと出会いかかわっていく道を開くことだと説明されています。また著者は、そうした関係を適切に築いていくためには、カウンセラー自身がみずからのコンプレックスのありようを理解し、クライエントとの関係のなかでそれがどのように触発されるのかということに十分注意する必要があると論じています。
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