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徳川吉宗 の商品レビュー

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2014/03/21
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幕府中興の粗、八代将軍吉宗。百分の一以下の確率のチャンスしかなかった彼がどのようにして将軍になりえたのか。将軍として押し進めた改革とはどのようなものだったのか。吉宗の改革政治のリーダーとしての資質に迫るとともに、今日のいわゆる日本型組織システムの形成に道をひらいた享保改革の全体像を豊富な文献史料に基づいて明らかにする。日本型組織におけるスーパー・リーダーの条件。(1995年) ・第1章 元禄・享保時代と吉宗 ・第2章 幕府の財政改革 ・第3章 都市問題と行政制度の整備 ・第4章 司法制度の整備と『公事方御定書』の編纂 ・第5章 組織改革と人材登用 ・第6章 国産開発と徳川社会の近代化 ・終 章 吉宗のリーダーシップ とても面白い本である。徳川吉宗というと、江戸幕府中興の祖、享保の改革を行った人、米将軍というイメージであったが、本書では先行研究に基づき、新しい吉宗像に迫ろうとしている。 例えば将軍就任について、従来、尾張家と紀州家の争いや尾張家当主などの相次ぐ死去を面白可笑しく俎上に上げる話があるが、著者は、当時、当主(五郎太)の急死した尾張家は御家断絶の処分に相当する事態にあり吉通の弟継友が相続したものの「新家同様」と見なされて、御三家筆頭としての家格を失っていたという見方を示している。 新井白石の政策の否定と継承についても面白い。私は新井白石が荻原重秀を異常に敵視しその経済政策(貨幣改鋳)を否定した理由がわからなかったのだが、度を越した貨幣改鋳が通貨不信を招き、幕府政治の信用が失墜しており、信用を回復するためのものであったとする。吉宗も白石の政策を継承し、通貨の品位を上げる改鋳をしているが、財政破綻の危機にあった幕府は、上ヶ米令を実施することにより乗り越えようとする。また、国富の流出を防ぐため国産開発(朝鮮人参の栽培進行、諸国産物の調査)に力を注いでいることがわかる。本書を読むと新田開発、司法制度の整備なども含め、吉宗の政策が体系的に実施されていたことを知ることができるのは面白い。 吉宗の改革にどの様な意義があったのか、本書は入手困難な本ではあるが読まれるべき1冊である。

Posted byブクログ