消えた王国(第3巻) の商品レビュー
多臣夫はほとんど眠られぬまま夜を明かした。博多湾を抜け出す帆船が無事に泗沘城まで行けるかとの心配もあった。玄界灘を渡る船は三回に一回は無事に渡れぬ時が普通だった。しかし、彼はどうしても帰らなくてはならない。愛する妻の温沙如が待っているからだった。国を出るときに、温沙如は多臣夫に小...
多臣夫はほとんど眠られぬまま夜を明かした。博多湾を抜け出す帆船が無事に泗沘城まで行けるかとの心配もあった。玄界灘を渡る船は三回に一回は無事に渡れぬ時が普通だった。しかし、彼はどうしても帰らなくてはならない。愛する妻の温沙如が待っているからだった。国を出るときに、温沙如は多臣夫に小さな仏像を渡してくれた。それは遠くに旅立つ人に、金で造った仏像を身に着ければ福があると信じられていた百済人の習慣だった。
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