つかこうへい傑作選(6) の商品レビュー
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「初級革命講座 飛龍伝」を読んだ。 揃いも揃って卑しい。大衆のレジャーと化した革命とは、何。 「元」機動隊、「元」全学連というように、心身の故障でもはや過去の形骸となった肩書きに、誰も彼もが必死にしがみつく。その「元」は、自分の生を自分で納得するための単なるレゾンデートルである以上に、社会に自らの立ち位置を保つための権利として叫ばれるから、非常にタチが悪い。たとい腐臭でも何らかの臭いを放っているあいだは死者ではないかのように。どんな臭気であれ構わないのだから、当初頑なに否定していたはずの資本主義や商業主義だってコッソリ採り入れる。しかし、汚泥で厚く塗り込めても彼らは決してヨゴレだけでは済まさない。自分の生を認めることが何より肝心要なのだから。それで「飛龍」の伝説をでっち上げ、俺はつまり(少なくともかつて)潔白なのだと謳う。潔白を社会に訴えて優しくしてもらおうとへつらう革命家とは、本当に何。社会変革の意欲は口先にはのぼるけれど、その足はもはや言うことを聞かず(不自由を笠に着て好き放題を喋っているともとれる)、その手はつるつると石を磨くだけ。正当化された燃え尽きの嫌らしさが芬々と香る。 口が手足から乖離し、やたらに達者なのは考えものである。それを踏まえて芥正彦のブレない姿をみるとウウム。どっちも極端か…「悩みの中に倫理がある」、この言葉が鍵となりそうだ。「自己批判します」と単につぶやく以上の、懊悩。
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