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人権宣言論争 の商品レビュー

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2009/10/04

イェリネックの貢献はまず、「われわれは今まで、もっぱら、政治理念の文献上の淵源ということにかかずらわってばかりいて、それらの理念を現行法に転化した生きた歴史的な諸力は何であったのかという問いをおろそかにしてきた」(10頁)という問題意識を持って、「近代国家の法の中に打ち出されてい...

イェリネックの貢献はまず、「われわれは今まで、もっぱら、政治理念の文献上の淵源ということにかかずらわってばかりいて、それらの理念を現行法に転化した生きた歴史的な諸力は何であったのかという問いをおろそかにしてきた」(10頁)という問題意識を持って、「近代国家の法の中に打ち出されているきわだった思想が、単に学説史や法概念の展開の歴史からのみ捉えられるのではなく、とりわけ、文化現象全体を土台として動いている、制度の歴史から捉えられなければならない」(7頁)、と問い掛けたことにある。そのようなイェリネックの特色は、非宗教的=啓蒙的理性の役割を大きく評価するブトミーの反論との対比において、さらに際立ったものとなっている。  キリスト教の役割について、イェリネックがルターとカルヴァンを区別したことは評価できるが、果たしてカルヴィニズムが「信教の自由」を確立したのか否か、という問題は残る。それは、彼も評価しているロジャー・ウィリアムズの思想の中に、カルヴィニズムの契機と再洗礼派の契機がどのように関係しているか、という問題であろう。  どちらにしても、キリスト教信仰の歴史的形成力を明らかにする議論として、ヴェーバーの「プロテスタンティズムの精神と資本主義の精神」と共に、キリスト教の公共性に関心を持つ多くの人々に読んでもらいたい著作である。

Posted byブクログ