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安南 の商品レビュー

3.5

9件のお客様レビュー

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2013/10/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1993年9月に刊行された『安南』は初版4万部を1日で売り尽くしたという。時に、この新人作家クリストフ・バタイユ(ちなみにジョルジュ・バタイユとは無関係)は弱冠20歳だった。わずか1日にしてベストセラー作家となったのだが、本書は娯楽小説ではなく、日本風に言うなら純文学。翌年には、史上最年少でドゥマゴ文学賞まで受賞している。この小説の第一の魅力はやはりエキゾティシズムにあるだろう。フランス革命を間近にした19世紀末のヴェトナムが舞台だ。デュラスを想起する人も多いだろう。また宗教との関係では遠藤の『沈黙』を。

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2013/02/25

簡素な文章で確かにわかりやすいのだけれど、斬新で素晴らしい文体というよりは、プロットのような印象をうけました。 会話がなく、こうだった、ああだったと物語が、ただただ進んでいきます。 いい印象をいただいていないような感想になってしまいましたが、わりと好きな作品です。

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2012/09/27

ベトナムを空想ではなく描いているが、フランス人の目から見たベトナムをフランス人の修道士と修道女が暮らす状況を描いた小説である。映画にはなるが、ベトナムはわからない。

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2012/09/08

辻邦生氏の訳はすばらしいし、もとの文章もよいのだろう。 ただ、亜熱帯を描写するには、お上品(静謐)すぎる文体。 全体としてはオリエンタリズムもの。 類似のテーマなら、遠藤周作の『沈黙』のほうが好み。

Posted byブクログ

2012/08/25

安南は、中国人、フランス人などがかつてベトナムを呼んだ称。 インドシナやベトナムがフランスと濃厚に絡まる印象深いものといえば、マルグリット・デュラスの『L'AMANT』 原作もベトナムの香りがプンプンしたが、ジャン・ジャック・アノー監督の映像は格別だった。インドシナの...

安南は、中国人、フランス人などがかつてベトナムを呼んだ称。 インドシナやベトナムがフランスと濃厚に絡まる印象深いものといえば、マルグリット・デュラスの『L'AMANT』 原作もベトナムの香りがプンプンしたが、ジャン・ジャック・アノー監督の映像は格別だった。インドシナの船上の風に吹かれるフランス人の少女は、あまりにエクセントリックに見えた。 同じく映画の「インドシナ」は、母国を見たことがないカトリーヌ・ドヌーヴ演じるフランス人の主人公は、安南の皇女を養女にしていた。 上記のふたつの作品は20世紀の仏領インドシナでの物語だが、本書、『ANNAM』は、1887年、ベトナムがフランス保護領になるちょうど百年前のフランス革命真っ只中であるルイ16世治世時代から、はじまる。 祖国を追われた若干7歳のベトナム皇帝のカンは、ヴェルサイユ宮殿に身を寄せる。フランスに来て暫くして幼いカンは肺炎をこじらせて死んでしまう。 カンと淡い交流を持った一人の司教は、ドミニコ会の修道士の一団と五人の修道女をベトナムに送り込んだ。 高温多湿の異郷の地で、修道士たちは、現地の村人と共に生活をし、布教活動を行った。 年月はどんどん過ぎてゆく。仲間は病気であるいは迫害されて殺された。 フランス国内は危機的状況にあり、遠い異国の彼らは完全に忘れ去られた。忘れられたのだ。 故国に帰ることもできなくなったひとりの修道士とひとりの修道女は、深い緑の生い茂るベトナムの地でふたりで生きていた。 やがて、彼らは信仰を捨て、愛し合うふたりの男女となり、ベトナムの地で死んでいく。 長文の小説ではない。クリストフ・バタイユの文体は韻文的で詩的表現に長け、鋭い感覚的情緒を放散する。 史実をベースに、アジアのエキゾチックな風土と劇的主題を簡潔精緻に描き尽くす。 絶望と孤独、破滅のなかで、神に仕える男女が見出すのは、互いを求め合う精神的肉体的愛であり、運命悲劇に束縛されつつもそこに強い感動を見出す。 クリストフ・バタイユは、20歳にこの小説を完成させたということに眩暈を感じる。 20歳の時に4ヶ月ベトナムに滞在し、帰国してすぐ二ヶ月で書き上げられたという本書は、クリストフ・バタイユに纏わり付いたベトナムの面差しが、十二分に感じられ、その独特な文体は、そこはかとない幽愁を漂わせる。 訳は、辻邦生さんと堀内ゆかりさんの共訳。

Posted byブクログ

2012/07/16

バタイユの感性はけっこう好き。緊迫した文章。アジアの湿気で、聖書はふやけていく。信仰心は薄くなる。神なんてどうでもいいじゃん、平和なら。

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2009/10/07

1787年、故国で王宮を追われたヴェトナム摂政グェン・アイン(阮福映)は長子で皇帝のカン(景)をフランスに派遣し、ルイ16世に表向きキリスト教の布教の名の下に軍隊による支援を請うが、弱冠7歳の幼帝カンはヴェルサイユで客死する。 それが契機となってピエール・ピニョー・ド・ブレエーヌ...

1787年、故国で王宮を追われたヴェトナム摂政グェン・アイン(阮福映)は長子で皇帝のカン(景)をフランスに派遣し、ルイ16世に表向きキリスト教の布教の名の下に軍隊による支援を請うが、弱冠7歳の幼帝カンはヴェルサイユで客死する。 それが契機となってピエール・ピニョー・ド・ブレエーヌ司教がヴェトナム布教のために貴族達から巨額の基金を集め、宣教師の一団と軍隊を組織、彼らは2艘の船でヴェトナムに出向する。 1789年5月彼らは念願のヴェトナムに到着するが、諍いの後に船乗り、軍隊、宣教師の一団に組織が分裂する。船は去り、軍隊はサイゴンを目指すが道のりは険しく病やヴェトナム人の襲撃によってあえなく全滅してしまう。宣教師の一団(修道士5名修道女4名)はパ・ジェン村で布教活動に励みその村はキリスト教の一大拠点となっていくが、故国フランスではフランス革命が勃発しヴェトナム遠征隊は見捨てられる。 1800年グェン・アインは自力で復権するが息子を死なせ援軍すらしなかったフランスへの復讐としてパ・ジェン村の宣教師とキリスト教徒を虐殺する。偶然、その数日前に安南を目指して旅立ったドミニク修道士とカトリーヌ修道女は以後布教には専念することもなく密林の村の片隅で現地人に習って生活をしながら互いの肉体に溺れていく。 20歳の青年が書いた処女作とは思えないような老成した感のある美しい物語。西洋文化に精通した辻邦夫を翻訳者に得て詩情豊かな作品に仕上がっている。 ただ、宣教師を受け入れる立場のヴェトナムの村人や自然描写が臨場感に欠けていて物足りなかった。 1760年生まれのヒロインが1800年以降の性描写で若い女と形容されるのにも違和感。

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2009/10/04

ルイ16世時代、宣教師を乗せてフランスからベトナムへと渡った2隻の船。フランス革命の混乱のうちに、愛する母国から忘却されていった宣教師たちの信仰が辿り着く先とは? 感情を排除し、淡々と綴られる散文から浮かび上がるのは湿度の高い、匂い立つようなベトナムの風景。信仰に生きた修道士と修...

ルイ16世時代、宣教師を乗せてフランスからベトナムへと渡った2隻の船。フランス革命の混乱のうちに、愛する母国から忘却されていった宣教師たちの信仰が辿り着く先とは? 感情を排除し、淡々と綴られる散文から浮かび上がるのは湿度の高い、匂い立つようなベトナムの風景。信仰に生きた修道士と修道女の愛がラストにかけて天に昇華するかのように崇高に描かれる。1994年最年少でドゥ・マゴ賞を受賞しフランス文壇を騒がせたクリストフ・バタイユ。彼の作品を読まずにあなたは現代フランス文学を語ってはならないのです

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2009/10/04

表紙に著者クリストフ・バタイユへの賛辞が書いてあり、この賛辞が素晴らしすぎたため、期待が大きくなりすぎて、読めば読むほど、「いつ面白くなるんだろう?」という期待が続き、最後は「あっそっ!!」って感じで終わってしまった。  キリスト教徒の人には「なるほど〜」と感じるところがあるのだ...

表紙に著者クリストフ・バタイユへの賛辞が書いてあり、この賛辞が素晴らしすぎたため、期待が大きくなりすぎて、読めば読むほど、「いつ面白くなるんだろう?」という期待が続き、最後は「あっそっ!!」って感じで終わってしまった。  キリスト教徒の人には「なるほど〜」と感じるところがあるのだろうか? フランス人には深く理解できるのだろうか?でも、日本人には私同様理解しにくいものがあるかもしれない。解説を読んだら、なお分かりにくくなってしまった。

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