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栗田艦隊 の商品レビュー

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2018/12/02

本書は、栗田艦隊参謀長であった著者が、昭和31年に刊行した単行本の文庫版である(現在版元品切)。マリアナ沖海戦で帝国海軍の航空兵力は壊滅的な打撃を受け、軍令部も連合艦隊司令部も俄かには次期作成計画を立案し難い状況に陥った。栗田艦隊は当面燃料に事欠かないリンガ泊地での訓練を命ぜられ...

本書は、栗田艦隊参謀長であった著者が、昭和31年に刊行した単行本の文庫版である(現在版元品切)。マリアナ沖海戦で帝国海軍の航空兵力は壊滅的な打撃を受け、軍令部も連合艦隊司令部も俄かには次期作成計画を立案し難い状況に陥った。栗田艦隊は当面燃料に事欠かないリンガ泊地での訓練を命ぜられ、リンガ泊地で対空・対艦戦闘の猛訓練を実施する。しかし、ようやく発令された捷一号作戦は敵艦隊主力が対手ではなく、レイテ湾に突入して敵輸送船団を撃滅せよというものだった。ここで栗田艦隊幕僚が抱いた作戦への疑義が、結局は「謎の反転」と言われるレイテ湾突入中止を帰結することになる。「序」で福留元海軍中将が指摘するように、レイテ湾海戦は「交戦兵力」「戦闘時間」「作戦海域」において「有史以来、比類のない大海戦」であった。その間、敵艦隊に決定的な打撃を与えられないまま、潜水艦、艦載機による集中攻撃を受けて各艦隊は戦艦武蔵をはじめ主力艦を次々と喪失していく。そして、敵情不明の中、敵機動部隊発見の「虚報」を受けて転戦、レイテ湾突入の機会は永遠に失われてしまうのである。著者は、反転については「冷静公平な判断に魔がさした」としつつ、たとえレイテ湾に突入して「玉砕全滅」しても実質的戦果はほとんど期待できなかっただろうという。蓋し、宜なるかな。但し、このレイテ湾海戦の戦闘経過については、小島清文『栗田艦隊退却す』をもって補正すべき点が多々あるように見受けられる。

Posted byブクログ