意外な解放者 の商品レビュー

The Holocaust Oral History Project(編者),The Unlikely Liberators Project(編者),猿谷要,篠輝久

2016/08/03

1945年3月末、第522野戦砲兵隊は味方のライン川渡河を援護せよという命令を受ける。この砲兵大隊こそ、ドナウ川を越えてドイツ国内へ深く進入し、思いがけなくダッハウでユダヤ人強制収容所へ突入することとなった。その周辺にもまだ他の収容所があって、日経兵士たちは次々とユダヤ人を解放する役割を担った。彼らは目の前に現れた建物がユダヤ人の強制収容所であることを初めのうちは全く気が付かなかったという。アメリカの強制収容所の中か志願して兵士となり、ヨーロッパの広大な戦線を戦い抜いて辿り着いたのが、同じように差別に苦しんできたユダヤ人の強制収容所だった。したがって日経兵士たちは生命を投げ出して二重の解放を成し遂げたことになる。まだアメリカの強制収容所の中で暮らしている両親をやがて解放し、偏見をおしのけてアメリカ市民権を獲得させること、そしてドイツでは死に瀕していた大勢のユダヤ人を解放したこと。しかし犠牲者の数も多く、陸軍省の発表によれば、1940年11月から45年12月までに徴兵を受けた2世の数は総計2万5,778人、このうち本土とハワイはほぼ半々ずつで戦死者650人、負傷者4,349人、線戦傷病者4,881人となっている。一方、戦果の輝かしさに対する勲章の受賞もめざましく、議会殊勲賞1人、殊勲部隊章3人、殊勲十字架章42人、シルバースター章350人、ブロンズスター章823人、その他数多くの勲章が授与され、アメリカ陸軍の歴史の中でも記念すべき記録を残した。