野上弥生子随筆集 の商品レビュー
小説も良いですが、随…
小説も良いですが、随筆にも味わい深いものがあります。
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野上弥生子が能楽や伝統芸能のことに殊更造詣が深いのは夫である豊一郎が英文学者から能の研究家に転身した能楽研究家であることにも影響されている。彼は同じ臼杵出身で夏目漱石の門下生であり明治女学院時代の彼女と知り合い結婚する。戦後、法政大学の総長も務め、臼川と号す知性と教養の文化人であ...
野上弥生子が能楽や伝統芸能のことに殊更造詣が深いのは夫である豊一郎が英文学者から能の研究家に転身した能楽研究家であることにも影響されている。彼は同じ臼杵出身で夏目漱石の門下生であり明治女学院時代の彼女と知り合い結婚する。戦後、法政大学の総長も務め、臼川と号す知性と教養の文化人である。「迷路」の中でかなり詳しく能楽の世界が描かれ「秀吉と利休」で茶道や日本の伝統文化が如何なく語られるのも宜なるかなである。夫婦それぞれの家系や交流する人々で醸す空気感が彼女の作品に通底する独特のスノッブ臭を産む。 豊後の南画という件では故郷の二軒の旧家に竹田一派の作品を見に行く話がある。竹田と草坪や杏雨の絵を見て、それらの代表作への瑞々しい感動の表現がまさに彼女の真骨頂である。 竹田を「見るからにのびやかな、神経質な点の微塵もない寛闊な画」「頭脳明晰な高邁卓見の士」「色彩家としての真価」‥‥といい、竹門の二秀才に対しては「草坪の飽くまで鋭く厳粛な中に、一種朗らかな美しさと天凛の高貴を見せた筆致の前には、杏雨ののびやかさも暖か味も、ただ金と暇に任せて気長に修練した上手の画という以上に見えないのは已むを得ない」という。これらの描写に触れるとまったくの門外漢でもその画を是非とも見てみたいという気にさせられるから不思議である。 伊藤野枝との関係、次男の中学受験の話 寺田寅彦の話、戦争観等々、主婦で作家であることと政治・社会活動への関わりなど微妙な本音の表出が至る所に窺える。
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大分県のかた/私の生家は大分県とはいえ遠いですが、土地の感じがよくわかる気がします。祖母なんかはこんなのが当てはまる時代なのだろうかとも、厭なところがよくわかります
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