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二人の平成 の商品レビュー

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2019/12/01

1991年におこなわれた、橋本治と中野翠の対談。昭和天皇の崩御から始まって、「昭和」という時代とそれを支えてきた世代に対する批評が展開されています。 本書の読み方は二つあって、一つは、中野の考えに橋本がえんえんと注釈をつけた本として読むやり方、もう一つは、橋本のえんえんと続く議...

1991年におこなわれた、橋本治と中野翠の対談。昭和天皇の崩御から始まって、「昭和」という時代とそれを支えてきた世代に対する批評が展開されています。 本書の読み方は二つあって、一つは、中野の考えに橋本がえんえんと注釈をつけた本として読むやり方、もう一つは、橋本のえんえんと続く議論の結論を中野がスパーン! と明快に(若干キレ気味に)取り出して見せた本として読むやり方でしょう。個人的には、中野翠という人については「林真理子の亜流」というくらいの認識しかなかったので、橋本の手引きによる「中野翠入門」として読みました。 読者の目を引くポイントとしては、今の男の子の通過儀礼は「やっぱり男と寝るしかないと思う」という橋本の発言ではないでしょうか。いまの男の子は通過儀礼というものがないから、「可愛い」少年のままで成長して、自分のなかで「可愛い」ということをどう位置づけてよいのかわからなくなっていると橋本はいいます。ところが、そういう男の子に「君は可愛いんだからいいじゃない」といってしまうと、「俺は可愛いと言われたぞ」という仕方で権力志向に走ってしまいがちで、それはつまらないと橋本はたたみかけます。そして、このようなごたいそうな「自分」の身体を、ふたたび他人のために譲歩できるものへと作り変える通過儀礼が、「男と寝る」ことだという主張が展開されることになります。 話題が次々と移っていくので全体の見通しのようなものを得るのはたいへんむずかしいのですが、むしろ対談の醍醐味はこうしたところにあるのではないかという気がします。

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2009/10/04

 ちくま文庫から1995年に刊行。1991年に主婦の友社から刊行された『ふたりの平成』に加筆のうえ、文庫化。

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