ヨーロッパの病院建築 の商品レビュー
英国の看護士フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)がクリミア戦争の看護経験を元に設計したセント・トーマス病院(聖トーマス病院 St Thomas’ Hospital)の病棟は当時画期的であり、今もその思想は活かされている。 彼女はセント・トーマス...
英国の看護士フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)がクリミア戦争の看護経験を元に設計したセント・トーマス病院(聖トーマス病院 St Thomas’ Hospital)の病棟は当時画期的であり、今もその思想は活かされている。 彼女はセント・トーマス病院の一角に看護師のための学校も開く。看護士でありながらある時は建築家、そして教育者、更には統計学者、執筆家の顔をもつ彼女の足跡をナイチンゲール博物館で追う。 ジョンソン首相が新型コロナウイルス(COVID-19)に感染した際に入院したセント・トーマス病院、この由緒ある病院の歴史、そして病院内の教会屋根裏にかつて造られた手術室(当時の手術は見世物状態で麻酔もなかった The Old Operating Theatre Museum)や調剤薬局だったハーブ・ギャレット(Herb Garret)の博物館など、ロンドンの医療の史跡を書籍『ロンドン こころの臨床ツアー』、 『ヨーロッパの病院建築(建築巡礼)』を携えて巡る、ロンドン病院巡り。 ● ロンドンで病院巡りをするきっかけ『ロンドン こころの臨床ツアー』丹野 義彦 著に出会う ● 歴史上屈指の病院であるセント・トーマス病院(聖トーマス病院) ● 興味深い各国の病院建築、 『ヨーロッパの病院建築(建築巡礼)』を読む ● ナイチンゲール博物館(Florence Nightingale Museum)にみる、彼女の偉業 ● 病院が建ち並んでいたロンドン橋(London Bridge)の界隈とセント・トーマス病院の旧手術室 ロンドンでの病院巡りがあまりに興味深く、続いて買い求めたのが『ヨーロッパの病院建築(建築巡礼)』という書籍。これはセント・トーマス病院のみならず、欧州各国の病院建築の特色が図面と共に眺められる。この本で、ナイチンゲール病棟の原型はフランスにあることを知った。なるほど、確かにナイチンゲールの活躍したクリミア戦争で、英国はフランスと同盟下にあったから、その影響を受けたのだろう。 また、ナイチンゲール病棟は開放的な一方、プライバシー保全には難があるので、昨今建てられた病院には取り入れられていない。それでも昔の病院では、この病棟デザインを変えずにそのまま使っているところも多いらしい。看護する側にとってはこちらのほうが好評のようだ。この本には、そんなことも記されている。 また、興味深いのはドイツの病院。図面は幾何学的なものが多く、効率性を高める為に斜めの導線や廊下が目立つ。しかも、日本の病院建築に慣れた身からすると違和感のあるメタルな質感や硬質感ある設計の建物が多く見受けられる。このあたりも合理性や機能性を愛するドイツ人ならではと感じ入る。 更に、面白かったのは国際会議かなにかでのフランス人たちの見解。先ほどご紹介した現在のセント・トーマス病院の新館は壮麗な旧館を1/3ほどつぶして建てたが、そのことに非常に懐疑的なのだ。フランスでは、景観を守る為に、相当な苦労をして既存の建物の外見を維持し、改装をしている。インフラや機器の進歩などが著しい時代にあって、機能の固まりのような病院建築で古い建物を活かしながらリノベーションするのは相当難儀であろう。ただ、そこまでしても古い景観や建物を守るフランス人もなかなか凄い。 病院は、いずれは自らもお世話になるところでもあるし、興味深いお話が満載である。 詳細はコチラから↓ https://jtaniguchi.com/nightingale-stthomashospital-oldoperatingtheatre/
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