苦悩の英雄ベートーヴェンの生涯 の商品レビュー
ロマン・ロランの伝記三部作のうちの一つ。 ベートーヴェンの偉大さは音楽だけにあらずというのを改めて認識した。 不幸が束になって、次から次へと降りかかってくる。それでもベートーヴェンは屈しない。人生から「何くそ、何くそ」という音楽が聞こえてくる。リングに沈んでは立ち上がるファイタ...
ロマン・ロランの伝記三部作のうちの一つ。 ベートーヴェンの偉大さは音楽だけにあらずというのを改めて認識した。 不幸が束になって、次から次へと降りかかってくる。それでもベートーヴェンは屈しない。人生から「何くそ、何くそ」という音楽が聞こえてくる。リングに沈んでは立ち上がるファイターのように、見る者の胸を打たずにはおかない。不幸で、貧乏で、障害があって孤独な彼を、励ましたいとか、寄り添いたいとか、救いたいとか、そんな気持ちは沸かない。見る者はただ畏敬の念に打たれ、「何くそ」という灯火をうつされる。それが偉大な生き方の証なのだと思う。 ロマン・ロランはそれを読者に見せたかったのだと思う。偉大な人生も、見出し、書き残す人がいなければなかったことになる。 今を生きる偉大な誰かの人生もどうか見出されますように。
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作者のロマン・ロランが自分のベートーヴェンに対する熱い思いから書き切ったと記す伝記。父や甥との関係、聴力の悪化、作品を発表しても楽にならない暮らし、大恋愛と失恋、道徳感…「狭き門」を読みながらも思ったが、昔の人の潔癖さと生きにくさ、みたいなのは時代のせいなのか。手紙でしか繋がれな...
作者のロマン・ロランが自分のベートーヴェンに対する熱い思いから書き切ったと記す伝記。父や甥との関係、聴力の悪化、作品を発表しても楽にならない暮らし、大恋愛と失恋、道徳感…「狭き門」を読みながらも思ったが、昔の人の潔癖さと生きにくさ、みたいなのは時代のせいなのか。手紙でしか繋がれなかった時代ならではのフラストレーションも相まって、切なくなってくる。もしも彼に支えてくれる家族があったなら、もっと穏やかな人生が送れたのか、でもこの人生だからこそ数々の作品が生まれたのか。今また別の意味で生きにくい世の中、命を絶つ人も少なくない中で、何が正解なんだろうかと考えてもどかしい。
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