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企業のなかの男と女 の商品レビュー

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2011/11/18
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修士論文の研究の中で、エスノグラフィの良書として積ん読。 以下が気になったポイント。 ■3章 管理者たち ・組織研究では、様々な状況の下で、リーダーは、自分たちと社会的に似ている部下を好み、昇進を助けるという実例が多く示されている。 ・序列の少ない共同体的な環境では、信頼関係の相互確認がなされ、互いの人間性を熟知しているから、風変わりな人物も愛すべき存在として寛大に扱われる。 ・これに対し、官僚的な企業では、人物の選考基準は外的要因に置かれ、管理者は、自分たちと適合する人物、つまり自分たちと同種類と思える人物のために権力と特権を保障しようとする。 →構造が、社会的に同種の管理者のレプリカを生み出す原動力となっているのである。 ・同調性を求める圧力や、「部外者」に対して排他的な管理集団の発展は、経営管理の職にまつわる不確実性から発している。官僚制は、不確実要因を予測可能なもの、あるいは日常的な慣行に変えるための考案だと考えられているが、それでもなお不確実性の高い状況、つまり人間抜きの手順より各個人を信頼しなければならない状況は多いのである。 ・不確実性が存在する場では、必ず誰かが決断をしなければならず、それゆえに、個人的な裁量が生まれる。そして、この裁量ゆえに、信頼、そして、信頼につながる忠誠心やコミットメント、共通の価値観に基づく相互理解という問題が現れるのである。 ・経営管理業務は、近代的な大企業において明確に位置づけされるにつれ、確実性を高めるための次のような側面が現れてきた。 -社会的他者を排除する堅牢な内部組織の発達 -社会的に似た背景を持つ仲間への支配権の委譲 -同調整の重視 -無限の忠誠心の要請 -社会的に異種とみなされる人物との関わりから生まれる緊張関係を嫌い、コミュニケーションの楽な方を選ぶこと である。これらの拘束的な諸相は全て不確実性に由来する。 ・不確実な状況の下では、人間に頼らざるを得ない。そうすると、人はその人間の社会的な基盤に信頼を置くようになる。不確実性が増せば増すほど、均質的なグループをつくる方向への働きかけが増すのである。 ・信頼関係が想定される閉鎖的内部集団は、社会的背景や社会的特徴における類似、あるいは組織の経験の類似という二種類の均質性によって生み出される。 ■不確実性、裁量、信頼の必要  不確実性の減少→異質性の増加 ・経営管理業務が規則化し、結果の予測が可能になると、それに携わる人間の個人的特徴の重要性は減少する。 ・このようにして開かれた集団に異質な分子が入るようになると、均質な経営管理集団にその社会的特徴が適合しない者は、最も不確実性の少ない経営業務に固まる傾向が出てくる。彼らは何をするかとかそれをどう判断するかが、より規則的な場所に固まる。 ・女性たちは、社会的な接触や組織内のコミュニケーションを取る必要が最も少ない部署に置かれる。 ・組織の不確実性ゆえに社会的な均質性への要求が増すと、次には、円滑なコミュニケーションの必要性から排他的な働きかけの数々が生み出される。 ■コミュニケーションと社会的確実性の優先 ・経営業務の大部分を占めるコミュニケーションには、迅速さ、正確さが求められる。また、遠くに届き、それも人間を介さない手段や、直接知らない人間を通しても届かねばならない。 ・そのために、共通の言語や共通理解が重要になる。意味システムに違いがあったり、理解不可能なメッセージだからといって、少ない時間をやりくりして、本当の意味を正確に推測しようとしたり、共通の経験を増やそうとするものはいない。 ・経営管理業務におけるこのようなコミュニケーション構造のために、よりスムーズな社会的関係を求め、コミュニケーションが最も楽な人間を選ぼうとする傾向が生じる。 ・仲間へ受け入れられることと、コミュニケーションの容易さを確保する一つの方法は、経営業務を社会的に均質のグループに限定することである。 同じような経験をもった人間と話をする方がずっと容易だし、より確実で正確、そして予測がつきやすい。微妙な意味合いの解釈に費やされる時間も抑えられ、その分の貴重な時間を管理者は自分の仕事に使うことができる。 ・コミュニケーションをとりにくい人間、わかるまでに時間がかかる人間や、予測がつきにくい人間を避けたいという強い願望が存在する。 →均質なネットワークは、異質な要素との協働の難しさを増幅する。

Posted byブクログ