華僑はアジアをどう変えるか の商品レビュー
1995年という本でありながら、洞察がすごく、なんで20年間この視点を日本が持てずにいたかが悔やまれる。1990年代始めから、すでに台湾資本、香港資本によって東南アジアに莫大な額がFDIとして投入されていたし、その額はバブル期ですら日本からのFDI額を超えていた。さらに、改革開放...
1995年という本でありながら、洞察がすごく、なんで20年間この視点を日本が持てずにいたかが悔やまれる。1990年代始めから、すでに台湾資本、香港資本によって東南アジアに莫大な額がFDIとして投入されていたし、その額はバブル期ですら日本からのFDI額を超えていた。さらに、改革開放で力をつけた中国大陸資本も香港を経由して東南アジアへの資本投下が始めっていた。一方で、東南アジアの華僑富豪は香港を経由して大陸への投資を開始し、シンガポール政府は蘇州の工業地区開発を全面後押し。香港とシンガポールの競い合いはこの頃から始まっており、資産運用で強い香港に対し、シンガポールは仕組債やプライムブローカーをとる戦略に出、さらに「インドの香港」となるため、バンガロールでの工業団地開発にも参加。中国返還前の香港だが、1995年時にはすでに一度、オーストラリア、カナダ、アメリカなどに逃げた華人が香港に帰国した様子もあり、出てくだけでなく帰還もあったことが読み取れる。また、台湾はコスト高となり、大陸進出およびベトナム・インドネシアなどへの南向政策に乗り出していたこともわかる。華人富豪たちが世代ごとに国を変え、最終的には北米へ移住するケースが増えていきてもいた。この時点で著者は、アジア経済は華人経済を中心に回ることを指摘しており、日本は苦境に立たされ華人との提携が鍵をにぎることを予言していた。
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