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松本清張小説セレクション(第21巻) の商品レビュー

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2014/12/28

短編4編を収録。松本清張の文章、好きだな。決して美文ではない、むしろ愛想のない文章だと思うのだけど、私はこの人は非常に細やかな、繊細な人なのだろうなと思う。強烈な妬みや嫉み、コンプレックスを描くことができるのも、この繊細さの裏返しだろうと思う。 もっとも印象に残ったのは「坂道の...

短編4編を収録。松本清張の文章、好きだな。決して美文ではない、むしろ愛想のない文章だと思うのだけど、私はこの人は非常に細やかな、繊細な人なのだろうなと思う。強烈な妬みや嫉み、コンプレックスを描くことができるのも、この繊細さの裏返しだろうと思う。 もっとも印象に残ったのは「坂道の家」。ずっと吝嗇家で通ってた商売人のおじさんが、キャバレーの女の子に夢中になって、どんどん貢いじゃう話である。おじさん危ないって、と読みながらひやひやしたのだが、彼の女の子への執着ぶりが凄まじく粘着質で笑えない。独占欲と嫉妬心。清張先生はこういうの本当にうまいなぁ。ラストが容赦なさ過ぎて泣けた。みんな怠惰なんだなぁ、と思う。 「遭難」も非常によくできたサスペンスで、静かな筆致でとても読ませる。ミステリーだからこそ、描写で書いて見せる手腕に感心する。素晴らしいなぁ。そうそう、「そのまま」を書いたら陳腐になってしまうんだよ、とこっそり声を大にして言いたくなる。松本清張はやっぱり面白い~。

Posted byブクログ