日本にとってアメリカとは何か の商品レビュー
「栗本慎一郎「自由大学」講義録」の第2弾。1994年春学期の講義をまとめています。 石川好の「ベトナム戦争はアメリカをどう変えたか」では、1960年代のヴェトナム反戦運動と、同時期に起こった性とドラッグの解放によって、現代にまでつながるアメリカの多様性が作られたことが解説されて...
「栗本慎一郎「自由大学」講義録」の第2弾。1994年春学期の講義をまとめています。 石川好の「ベトナム戦争はアメリカをどう変えたか」では、1960年代のヴェトナム反戦運動と、同時期に起こった性とドラッグの解放によって、現代にまでつながるアメリカの多様性が作られたことが解説されています。 今福龍太の「ヒスパニックが「アメリカ人」を変えた」では、アングロ・アメリカとぶつかり合う、最大のマイノリティ集団であるヒスパニックの内部の多様性を解説し、現代のマルチ・カルチュラリズムのうちに、エスニック集団を分類・管理する発想があるのではないかという危惧が指摘されています。 巽孝之の「アメリカン・テクノロジーの根源を探る」では、ウィリアム・ギブスンやトマス・ピンチョンといったアメリカの現代作家を参照しつつ、ポストモダンのテクノロジー文学が非合理的なものをも取り込みながら発展してきていることが解説されています。 粉川哲夫の「映画のなかにアメリカの「いま」を見る」では、ハリウッドの映画をたどりながら、1940年代以降の女性観や都市観の変遷をたどっています。 青木保の「階級国家・アメリカ」では、ブルデューやヴェブレンの業績を参照しながら、現代のアメリカの中に厳然として存在する「階級」の実態と、それが政治的・文化的に果たしている役割を考察しています。 全体のタイトルは「日本にとってアメリカとは何か」となっていますが、あまり日本との関わりについては触れられていないように感じました。ただ、本書で論じられているような側面が、日本人のアメリカ観の中にほとんど入っていないという事実が、「日本にとってアメリカとは何か」という問いに対する答えになっているようにも思えます。
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