海人と天皇(上) の商品レビュー
天皇が絶大の権力を手…
天皇が絶大の権力を手に入れる過程とその権力の実態が書かれています。律令制の立役者藤原不比等ってすごい人物だったのね。
文庫OFF
やはりおもしろい。まあ、ほとんどの人間関係については記憶し理解するということをあきらめて、さらっと読み流してしまったのだが。それでも、本筋のところは繰り返し書かれているので頭に留めることができた。それは聖武天皇の母の宮子についてだ。宮子は藤原不比等の娘ということになっているが、ど...
やはりおもしろい。まあ、ほとんどの人間関係については記憶し理解するということをあきらめて、さらっと読み流してしまったのだが。それでも、本筋のところは繰り返し書かれているので頭に留めることができた。それは聖武天皇の母の宮子についてだ。宮子は藤原不比等の娘ということになっているが、どうやら実際は南紀白浜あたりの海人だったということ。そこに髪の長い美しい女性がいるということで見初められたというのだ。なるほど、きっとそういうこともあったのだろう。これが上巻の骨。そして、下巻に入って孝謙天皇と道鏡との話。もう、このエピソードは電車の中で読んでいて思わず吹き出してしまった。そんなことあるか???下ネタである。まあ、そういうこともあったのかもしれない。「週刊○○」というような雑誌でも、○○に入ることばによっては信用できる情報とそうでないものがある。単なるゴシップかもしれない。それでも、火のないところに煙は立たない。それに近いことがあったと考えても良さそうなのだろう。ということで、梅原先生は確信したように2人の関係を描かれている。さらに、女帝と不比等が作った律令との関係。なるほど、藤原家が権力を持ち続けることを願った不比等にとっては、女帝の方が都合が良かったというわけだ。その後の摂関政治が始まると、女帝である必要はなくなるわけだ。権力を持ちたいという人の気持ちは僕にはわからないけれど、そういう思いを持った人は昔も今も居続けているわけだ。ところで、今年は「光る君へ」を見ているので、平安時代の生活の様子をうかがい知ることができている。いくつかのことばも覚えた。「陣の定め」などもその一つだ。「従五位の下」とか「朝臣」とか、ドラマで聞いていて耳に残ってはいるものの、その意味をあまり気にも留めていなかった。しかし本書でも頻繁に登場するので、ちょっと調べておおよその意味を知ることができた。これも、本書を読んでの収穫である。まあ、自分がいかに日本史の勉強をいい加減にやっていたかが露呈しただけであった。本書は、奈良の古本屋で偶然見つけて購入。しばらく積読していたが、中島岳志さんが集中的に梅原を読んでいるとつぶやいていたので、それに便乗して読んでみた。
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古代史について刺激的な仮説を多く提出してきた著者が、推古天皇から称徳天皇までの女帝の謎に挑んだ著書です。 「日本とは何か」という問題に取り組むことをめざして『朝日ジャーナル』での連載がスタートしました。そこで著者は、みずからの血を引く者に皇統を継がせたいと願う持統天皇と、その願...
古代史について刺激的な仮説を多く提出してきた著者が、推古天皇から称徳天皇までの女帝の謎に挑んだ著書です。 「日本とは何か」という問題に取り組むことをめざして『朝日ジャーナル』での連載がスタートしました。そこで著者は、みずからの血を引く者に皇統を継がせたいと願う持統天皇と、その願いを巧みに利用しつつみずからの権力の伸張を図る藤原不比等の実像に迫っていきます。 しかしやがて著者は、藤原不比等の娘で文武天皇に嫁ぎ聖武天皇を生んだ藤原宮子に関する、一つの伝承に突き当たります。それは、宮子が海人の子で、不比等の養子となったという、道成寺に伝わる伝承でした。著者は、不比等や文武天皇と紀伊の国とのつながりを示していることから、この伝承が隠された史実を伝えているのではないかと考え、そのことが、彼女の息子である聖武天皇の、どこか遠慮がちな即位の宣命や、その後の光明子に対する態度に現われているのではないかと推測します。 アカデミズムの実証主義史学ではまともに扱われることのない伝承に注目し、そこから極めて大胆な仮説を作り上げるというのは、著者の得意のスタイルですが、そのスリリングな議論にはやはり魅力を感じずにはいられません。
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