上山春平著作集(第3巻) の商品レビュー
本巻は四部構成となっており、第一部には『明治維新の分析視点』(1968年、講談社)が、第三部には『大東亜戦争の遺産』(1972年、中央公論社)が収められています。 第一部の『明治維新の分析視点』では、とくに日本近代史研究において支配的だった講座派の見方に対する批判がなされていま...
本巻は四部構成となっており、第一部には『明治維新の分析視点』(1968年、講談社)が、第三部には『大東亜戦争の遺産』(1972年、中央公論社)が収められています。 第一部の『明治維新の分析視点』では、とくに日本近代史研究において支配的だった講座派の見方に対する批判がなされています。講座派の歴史観はいわゆる「三十二年テーゼ」にもとづいており、天皇制をもたらし、また封建的な寄生地主制からの脱却もおこなわれなかった明治維新は市民革命ではないと主張します。著者は、市民革命の典型とされるフランス革命との比較をおこないながら、こうした講座派の見解を論駁しています。 第二部では、桑原武夫らによって領導された共同研究の成果である『フランス革命の研究』(1959年、岩波書店)に収録された著者の論考を収めています。著者は、 カバニスやデステュット・ド・トラシといった「イデオロジスト」と呼ばれる思想家たちがフランス革命にどのようにかかわったのかを解明しています。 第三部の『大東亜戦争の遺産』は、林房雄の『大東亜戦争肯定論』(中公文庫)とならべて論評されることもあったようですが、サブタイトルに「不戦国家の理念」ということばが付されているように、平和憲法の理念を現実のなかで生かしていくための方法について論じたものです。ただし新京都学派的な文明論的視点にもとづいた議論である点については留意が必要でしょう。 第四部には、元特攻隊員だった著者の戦争体験などにかんするエッセイ6編が収録されています。
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