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2010/05/20

 新しい知識との関係づくりに向け、コンピューターがどのように人々の助けとなるか。コンピューターと未来と教育を語る──。  たくさんの子供たちにLOGOというプログラミング言語を通して、「思考する」「学ぶ」というロジックことを学習してもらうために真摯に向き合った技術者さんの本です...

 新しい知識との関係づくりに向け、コンピューターがどのように人々の助けとなるか。コンピューターと未来と教育を語る──。  たくさんの子供たちにLOGOというプログラミング言語を通して、「思考する」「学ぶ」というロジックことを学習してもらうために真摯に向き合った技術者さんの本です。読んでいると襟元を正したくなります。  人の学びや認識の過程を知りたいならば「ピアジェ」の方がよさそうです。  以下はこの本の具体的なレビューではなく、読んでいて感じた個人的な感想文です。  * * *  この本が書かれたのは1970年代の後半から1980年に掛けて。  コンピュータの世界で言えばたぶん今からは想像も出来ないくらいの昔。  その時代にコンピュータと言えば、Windowsの前のMS-DOSですら出ていない時期。どのくらい古いかというと、巻末に書かれている最新のマッキントッシュのメモリサイズが「48K」……キロである。メガバイトではない。現在デスクトップのメモリサイズは2GB~4GB。単位が2つ違う。4GBをキロで示すならば、約4,000,000Kである。  グラフィックなんて黒い画面に単純な線で描かれるもの。それすら凄いっていう時代。  著者は、LOGOという、数学的・論理的な法則を持つ言語を用いて、子供たちに「論理的に思考すること」「複雑なことでも分解すれば考えることが出来る」「分類する」「なりたちを推測する」ということを教える。  このころに登場したBASICという言語については、「単純だけども、思考する余地のない言語だ」と切り捨てている。  今は、著者の懸念するとおりの「思考しなくても良い」世界になってしまっている。  昔は「炎よ」と叫んでも火はつかなかった。それ故に人は火の付け方を学ぶことができた。火による災害の防ぎ方や火の利用方法なども同時に学んだ。この本で言うところのLOGOは、人類に与えられた火に値すると思う。  そして思い出す。私が学生時代にプログラミングを学んだ言語はアセンブラだった。  学校に入った頃、アセンブラを使う仕事なんてもうなかったのだけれど「プログラムの成り立ちを覚えるため」ということでアセンブラが選ばれたのだと言う。  メモリの使い方、ロジックの組み立て方。どんなに複雑なことでも、考えれてロジックを組み立てれば、必ず作る事ができる。  アセンブラからCOBOL、Visual Basic、C言語、Java……、アセンブラを学んだ後、新しい言語を覚えたけれど、「ずいぶんと味気ない」と感じたものだ。出来ることはたくさんあるし、簡単に作ることは出来るけれど、「自分で考えて作った」感じが薄い。  資格試験のために出てくるアセンブラの問題はパズルを解くようで、とても面白かった。  社会に出てみれば、「Googleで調べれば?」という風で、大抵のことは自分で考えずとも、インターネットに答えが載っている。そして短期間で数をこなさなければ成らない場合、コピー&ペーストで、ほとんど頭を使わずとも、プログラムを書くことは出来る。  学生時代はプログラミングは面白いと感じていたけれど、大人になってからは、ほとんど考えていなかった。  そんな中、読んだのがこの本である。  自分が「思考すること」をどこかに置き忘れていたことを思い出した。  昔は何かを手に入れるために自作していたのに、今はどこかから借りてくるか、詳しい人に聞いてしまう。  それこそ「炎よ!」と叫べば、太陽すら手に入るのだ。  でも太陽がどういう仕組みで明るいのかも知らないし、太陽のそばに居ることでどういう影響があるのかは分からない。なのに太陽がなければ生きていけないような……。  古い世代の言語を使った私ですらそんな体たらくなのだ。一般人ってどうなっているんだろう?  思考することを学ばずに、問題と答えを暗記するような子供はどんな風に成長するんだろう?そんな不安を感じる作品だった。  この著者が現在をどう思っているのかを読んでみたかったけれど、翻訳されているものはない様子。現在は交通事故にあった後のリハビリに励まれているということだった。  噂の100ドルPCにも関わっていたらしい。納得。  私が想定していた本とは違ったけれど、大変興味深かった。

Posted byブクログ