遠き神々の炎(上) の商品レビュー
生き延びたのは子供二…
生き延びたのは子供二人だけ。これを察知した銀河世界は、彼らを救出せんと一隻の人類エイリアン共同船を送るが? 刻々と迫る最後の時。絶賛を博したヒューゴー賞受賞巨篇!
文庫OFF
昔なつかしなタイプの…
昔なつかしなタイプのスペース・オペラですが、アイデアが独特で現代的です。上巻は文句なしに面白いです。しかし、下巻になると...(下巻につづく)
文庫OFF
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
めちゃくちゃ面白い。設定が最高だし存分に生かしてくる。鉄爪族みたいな群で思考するタイプの生き物じゃないと、殺されかけて1個体だけ生き延びるっていう展開できないじゃん。個体選別して鋼鉄者とかアムディみたいなの作るくだりもすごいし、2個体だけ生き延びた斬伐者の意識が実はティラセクト寄りとか。 上位の存在がいるの、ちょっと血界戦線っぽい。絶対敵わない存在いるけど基本は関わらないの良い。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
遠い未来、銀河には様々な種族が作り上げた情報ネットワークが広がっていました。そんな銀河のある星で、人類は古代のアーカイブを発見します。アーカイブから目覚めたのは、銀河中に恐怖と混乱をもたらす想像を超えた強大な意識体だったのです。 人類は、最後の希望を宇宙船に託して緑の星に不時着します。しかし乗組員のほとんどは命を落とし、生き残ったのは子供たちだけでした。そして彼らは原住民である不思議な犬のような生き物たちの争いに巻き込まれてしまいます。銀河世界は子供たちを救うため、人類とエイリアンが乗り込んだ船を送り出すのですが…。 遠い未来の銀河を舞台にした本書のテーマは「多様な知性体との共存」です。人類、エイリアン、そして原住民の犬のような生き物たち、それぞれが独自の知性と文化を持っています。これらの異なる知性体が出会い、時に対立し、時に協力する様子が描かれているからです。 見どころは、何と言っても緻密に作り込まれた未来の銀河世界の設定でしょう。例えば、銀河規模の情報ネットワークや、異星の生態系など、細部まで考え抜かれた設定に何度もうならされました。 そして私は本書を読んで、SF小説の持つ可能性の大きさを改めて感じました。壮大なスケールの物語でありながら、登場人物たちの感情や葛藤も丁寧に描かれています。特に、見知らぬ星に取り残された子供たちの不安や勇気には胸を打たれますし、また、人類以外の知的生命体との出会いや交流を通じて、「知性」や「文明」の定義についても考えさせられました。 スリリングな展開と深い思索を併せ持つ本書は、SF好きはもちろん、壮大な冒険物語や異文化交流に興味がある人にもおすすめの一冊です。
Posted by
まず銀河系宇宙の設定がスゴイ。銀河系の中心部と周辺部では空間の物理特性がまったく違うのだ。中心部に向かうほど情報の伝達速度は遅くなり、知生体の思考速度も遅くなる。コンピューターの処理速度も同様である。銀河系の外側の「超越界」では、「神仙」と呼ばれる知生体が住んでいる。 要は...
まず銀河系宇宙の設定がスゴイ。銀河系の中心部と周辺部では空間の物理特性がまったく違うのだ。中心部に向かうほど情報の伝達速度は遅くなり、知生体の思考速度も遅くなる。コンピューターの処理速度も同様である。銀河系の外側の「超越界」では、「神仙」と呼ばれる知生体が住んでいる。 要は銀河系中心より遠く、外側であればあるほど、より超光速通信航法や情報処理速度が向上し、高度な文明が発達しているという世界観です。 この様々なエイリアン種族が構成する、遠未来の情報ネットワーク銀河(ニュースグループがある)。その超越界すれすれの星で人類は50億年前のアーカイヴを発見、喜びにわきたつのだが……そこから目覚めたのは、人知を超えた強大な邪悪意識「疫病体」だった。解き放たれたそれは恐怖と混乱を呼び起こしつつ、恐るべき規模で銀河中枢を蝕んでゆく。もうこれだけでお腹いっぱいですね。 一方この星から、最後の希望となる手掛りを積んで脱出した船があった。どうにか銀河系下位圏の星に不時着したが、彼らは犬によく似た集合知性体(鉄爪族)同士が繰りひろげる抗争に巻きこまれてしまう。生き延びたのは子供二人だけ。果たして救援は来るのか。銀河系の運命やいかに。1993年ヒューゴー賞受賞作。(以下。下巻に)
Posted by
最初はその異質な世界観についていけなかったが、理解できるとこれほどわくわくできるSFも久しぶりだなと気づく。地球は低速圏…銀河面から上昇すれば光速も超えれて思考速度も上がる。現実もこういう世界だと面白いのになあ。
Posted by
話の大枠は簡単、おおむね『ロード・オヴ・ザ・リング』。銀河の片隅で邪悪意識が復活する。だが、邪悪意識はまだ完全ではない。その欠損部分を持って逃れた者がおり、まだ勝機はある。さあ、どうやってこの強大な邪悪意識を倒すのか。 現代のわれわれはいまだ知らないことだが、宇宙空間の性質...
話の大枠は簡単、おおむね『ロード・オヴ・ザ・リング』。銀河の片隅で邪悪意識が復活する。だが、邪悪意識はまだ完全ではない。その欠損部分を持って逃れた者がおり、まだ勝機はある。さあ、どうやってこの強大な邪悪意識を倒すのか。 現代のわれわれはいまだ知らないことだが、宇宙空間の性質は均質ではない。つまり、銀河の中心に行くと知的生命が思考が困難となり、人工知性すらも働かなくなる、低速圏、さらには無思考領域となる。そこから銀河の外周に向かうに従って、高度な知性が可能な空間となり、ついに進化の行き着く先は神仙と呼ばれる超越的な生命体となる。同時に銀河の外周に行くにしたがって超光速航行も可能となるのだ。格差宇宙というか、格差銀河である。 際涯圏と呼ばれる領域はいまだ神仙には進化していない知的生命の領域であり、人類の子孫もいくつかの世界を作っている。そのひとつストリョーム圏の人々はある惑星の太古のアーカイヴを探査して、邪悪意識を復活させてしまう。探検隊はソフトウェア生命である邪悪意識の重要な一部分を盗み出して、神仙の一種である邪悪意識の手の届かない、無思考領域に近い後進的な惑星に逃れようとする。しかし邪悪意識に妨害に遭い、辛くも逃れたのは冷凍冬眠の子どもたちと、1家族を乗せた1隻の宇宙船。 たどり着いた惑星は後に鉄爪族と名付けられる知的生命のいる星。着陸した宇宙船はすぐに鉄爪族の攻撃に遭い、両親は殺され、姉ヨハンナと弟イェフリのきょうだいが生き残る。しかも2人は敵対する2つの陣営に別々に連れ去られるのだ。 種々の知的生命が暮らす際涯圏のネットワーク世界では情報の通信が重要な産業である。それを担っているのがヴリニミ機構。ストリョーム圏より下位の人類世界からはじめてヴリニミ機構に就職したラヴナも主役級のひとり。彼女はストリョーム圏の惨事に気付き、イェフリからの通信も傍受する。邪悪意識に関心を持った“ご老体”と呼ばれる神仙は邪悪意識に殺され、ヴリニミ機構も一緒に破壊されるなか、“ご老体”のエージェントとして使われていた低位際涯圏出身の人間ファムとともに彼女は鉄爪族の惑星に向かう。 幾多のアイディアが投入された本書でもとりわけ興味深いのは、鉄爪族である。彼らは犬に似た生物だが、数個体がひとまとまりとなる集合知性の生き物である。発声器官は2種類あり、1種類は他者とのコミュニケーション用。もうひとつは集合知性を形作る個体間での思考のための「思考音」用である。4〜6個体でひとつの意識を形作り、人間の手のような精妙な器官を有しないながらも、数個体が前足や口を協働することでそれなりに精妙な操作が可能となっている。 さらに面白いのは、集団の中の1個体が死んでも、別の個体を加えることで、意識体としては個体の寿命以上の生命の持続が可能となることである。そして、意識体を構成する個体の編成を慎重に操作することで、強靱な意識を生み出す、これが斬伐主義者の方法で、彼らは力による世界征服を目指している。こちらがこの惑星における邪悪なものであり、弟イェフリはこちらに懐柔されている。 他方、より自由な政体で技術革新を続けている木彫師市が、恐らくこの物語の希望を担うのだが、両親を殺されたヨハンナはそこの鉄爪族と馴染もうとしない。 中世的な世界にハイテクノロジーを持って落ちてきた人類の子どもたち、邪悪医誌に対抗する手段を求めてそこに向かうネットワーク世界の人々。物語は辺境の惑星の陰謀劇になだれ込んでいく。つまり大銀河の『ロード・オヴ・ザ・リング』が、『ロード・オヴ・ザ・リング』的中世世界に展開していくという趣向だ。 本書の直接の続編『星の涯の空』が翻訳されたのを機に、重版された。
Posted by
ヴァーナー・ヴィンジ"遠き神々の炎"を読む。 雑誌クーリエ・ジャポンの読書特集でザッカーバーグやラリー・ペイジがSFを挙げて話題になっていますが、ハードSFに限らず未知の技術、世界に迫るSFには少年の心を捕らえてやまぬ何かがあります。 これは壮大な、超越...
ヴァーナー・ヴィンジ"遠き神々の炎"を読む。 雑誌クーリエ・ジャポンの読書特集でザッカーバーグやラリー・ペイジがSFを挙げて話題になっていますが、ハードSFに限らず未知の技術、世界に迫るSFには少年の心を捕らえてやまぬ何かがあります。 これは壮大な、超越的、宇宙SF。恒星間文明の時代、人類は3つの大きな居住星域を中心に活動。 3つのストーリーラインが展開しつつ、相互に絡み合っていく。 辺境から首都にやってきたアーカイブ司書、未開の惑星に不時着し離れ離れになった姉弟。やがて三人の行動が絡み合い… 濃厚で読むとかなり疲れますが、それだけ人を惹きつけるものがあります。 厨二心をくすぐる要素も豊富で、星域間ネットワークを取り仕切る「ヴリミニ機構」、人類の出身地地球を含む低層圏、星域間文明が展開する際涯圏、超高速思考が可能となり神仙の住まう超越圏などゾクゾクする用語がてんこ盛りです。アラサー世代懐かしの「ゼノギアス」的ななにか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] <上> 銀河の片隅で人類が発見した太古のアーカイヴ。 だがそこに眠っていたのは人知を超えた強大な邪悪意識だった。 解き放たれたそれは恐怖と混沌を巻き起こし、恐るべき規模で銀河文明を蝕んでゆく。 一方この悪魔の星から、最後の希望となる手掛かりを積んで脱出した一隻の船があった。 だが不時着した先の緑の星で、彼らは犬型の集合知性体が繰りひろげる抗争に巻き込まれてしまった。 ヒューゴー賞受賞最新SF。 <下> 奇妙な犬型集合知性体の星にとり残された人間の子供ふたり。 対立勢力に別々に捕われ、人類のテクノロジーをめぐって抗争は激化する。 一方大銀河では、強大な力をふるう邪悪意識が数多の文明を崩壊させ、機構の中枢まで壊滅させていた。 虚偽と悪意の情報が乱れとぶ宇宙を、姉弟の救出にむかう人類=エイリアン共同船。 だがそこにも魔の手が。 絶賛を博したヒューゴー賞受賞巨篇。 [ 目次 ] <上> <下> [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
Posted by
宇宙規模の大災厄から中世異世界の戦争・陰謀劇までをひとつながりに連結して、そのいずれも面白くよませてくれる。スペースオペラの醍醐味を満喫できた。そのうち読もうと後回しにしていたのがもったいない。
Posted by
- 1
- 2