1,800円以上の注文で送料無料

滅びのチター師 の商品レビュー

4

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/03/17

音楽家と愛好家、こうも音楽にかかわる人々がウィーンに引き寄せられるのはなぜか。映画『第三の男』、ロマ(ジプシー)の人々、コロラトゥーラソプラノとして著名な歌手・グルベローヴァの歌声に触れながら迫る。 映画『第三の男』(The Third Man)はウィーンを舞台にした名画として世...

音楽家と愛好家、こうも音楽にかかわる人々がウィーンに引き寄せられるのはなぜか。映画『第三の男』、ロマ(ジプシー)の人々、コロラトゥーラソプラノとして著名な歌手・グルベローヴァの歌声に触れながら迫る。 映画『第三の男』(The Third Man)はウィーンを舞台にした名画として世界的にヒットした。しかし、現地ウィーンではなぜか不人気である。しかも、あの有名な主題曲を作曲演奏したアントン・カラス(Anton Karas)の人生も数奇であり、彼はウィーンで疎んじられていたと言う。 そして、惜しくも、この世を去った エディタ・グルベローヴァ(Edita Gruberová)、彼女も当初はすんなりとウィーンで受けいられた訳ではない。グルベローヴァ国立歌劇場デビュー45周年記念公演(45 Jahre Edita Gruberova an der Wiener Staatsoper)と、オペラの魅力に開眼した彼女の ツェルビネッタのアリアの思い出から、彼女の半生を描いた『うぐいすとバラ』を引き合いにウィーンを想う。 ● 映画『第三の男』が現地ウィーンで不人気な理由 ● 主題曲を作曲演奏したアントン・カラスのその後 ● ウィーンで伝説の歌姫の美声を浴びる ● 待ち望んでいた比類なき歌声 ● それでも音楽家たちは“魔の都”ウィーンを目指す ● 音楽家たちが夢を持って集まる街がハプスブルク家のお膝元ウィーン ウィーンと言えば、日本人になじみ深い話題が映画『第三の男』である。世界的に大ヒットした映画ではあるが、舞台となったウィーンにおいて、この映画の評価が低いことはあまり知られていない。 ただし、観光客向けなのか、ウィーンに行けば『第三の男』にちなんだ博物館はあるし、有名なシーンである下水道の見学ツアーなども未だに開催されている。私も、書籍『滅びのチター師―「第三の男」とアントン・カラス』(軍司貞則 著)を読むまで、ご当地ウィーンにおけるこの映画に対する不人気ぶり、嫌悪感など全く知らなかった。 この本を読みすすめていくと、なるほどウイーン市民の嫌悪感はここからきているのか、と納得できる。映画『第三の男』で描かれるウィーンは、ウィーンっ子ご自慢のハプスブルク家の栄華はどこへやら、戦後の荒廃しきったウィーンしか登場しない。しかも、いかがわしい詐欺師が跋扈(ばっこ)するフィルム・ノワールである。ご当地の方々がこの映画に不快感を抱くのも仕方ない。 そして、映画の主題曲『ハリー・ライムのテーマ』を作曲・演奏しているアントン・カラスに対するウィーン人の目線は更に厳しいものがあったと言う。 映画が国際的に大ヒットした際、どの国においても彼に対する賛辞は最高であった。ヨーロッパ各国の王室からパーティに招かれ、そこで演奏し、さらには様々な国への演奏旅行まで行っていた。これによって、戦後の経済困難な時期にもかかわらずカラスはたいそうな収入を得たらしい。一方、彼にしてみれば、チター1本たずさえ、作曲と収録のためにロンドンに連れ去られ軟禁までされて、ホームシックとノイローゼになりながら作曲した苦労がやっと報われた想いだっただろう。 しかしながら、映画が公開され、やがてその熱が冷めた後のカラスの末路は哀れであった。そのあたりの事情は『滅びのチター師』に詳しく書かれている。 詳細はコチラから↓ https://jtaniguchi.com/wien-karas-gruberova/

Posted byブクログ