新編 明治精神史(第1巻) の商品レビュー
安丸良夫とともに民衆史研究の第一人者とされる著者の第一作であり、代表作となる『明治精神史』の決定版です。 三多摩の民権運動家たちの人間群像に光をあて、とりわけ地方指導層である豪農たちの思想的な揺れ動きを通して、表立って現れて来ることのない、歴史の地下水脈をなす下層の人民たちの精...
安丸良夫とともに民衆史研究の第一人者とされる著者の第一作であり、代表作となる『明治精神史』の決定版です。 三多摩の民権運動家たちの人間群像に光をあて、とりわけ地方指導層である豪農たちの思想的な揺れ動きを通して、表立って現れて来ることのない、歴史の地下水脈をなす下層の人民たちの精神史にせまろうとする試みがなされています。あわせて、北村透谷や徳富蘇峰、中江兆民らがこの時代にどのようにそれぞれの思想を形成してきたのかということに触れ、彼らが民衆の精神史からなにを汲み取り、どのように切り結んだのかということを解明しています。 本書のもととなる著書は、1964年に黄河書房から刊行され、1968年に『増補明治精神史』が出されますが、1973年に大幅に改稿が施されて『新編明治精神史』(中央公論社)というタイトルで再刊されます。本書は、この中央公論社版を引き継いでいますが、一方で黄河書房版も講談社学術文庫(1976年)、岩波現代文庫(2008年)として刊行されており、それぞれ多くの読者を獲得しています。下部構造が上部構造を決定するという、いわゆる教条的なマルクス主義史学では見えてこない歴史の地下水脈をさぐるという民衆史の方法論について著者自身がくり返し反省をおこなった結果が反映されており、歴史学の方法についてもいろいろなことを考えさせられる内容になっています。
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