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ふたりの真面目な女性 の商品レビュー

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2014/06/19

ハリー・マシューズ『シガレット』に引用されていて興味を持って読んでみた。一言で言えばタイトル通りふたりの真面目な、真摯な女性が主人公で、一方は自己救済のためにしたくもないこと、むしろ怖いことを選び、一方は幸せになることを求めながら、幸せになれないとわかりつつしたいことを選ぶ。こう...

ハリー・マシューズ『シガレット』に引用されていて興味を持って読んでみた。一言で言えばタイトル通りふたりの真面目な、真摯な女性が主人公で、一方は自己救済のためにしたくもないこと、むしろ怖いことを選び、一方は幸せになることを求めながら、幸せになれないとわかりつつしたいことを選ぶ。こう書くとどうってことのないようだし、唐突な展開も多くてなんだかぎくしゃくした小説なのだけれど、不思議ととてもおもしろかった。蛇足ながらジェイン・ボウルズは『シェルタリング・スカイ』のポール・ボウルズの奥さん。伝記も読んでみようかな。

Posted byブクログ

2009/10/04

ひとりの作者のふたりのペルソナという見方もあるそうですが、 敢えて深く考えずに感想を書くと、 寝床の問題なのである。 ふつうに暮らしていれば、上流階級の婦人なだけであった はずの女性ふたりが、 なにゆえ道を踏み外したのか? ひとりは、「うまく断れない」がゆえに、寒...

ひとりの作者のふたりのペルソナという見方もあるそうですが、 敢えて深く考えずに感想を書くと、 寝床の問題なのである。 ふつうに暮らしていれば、上流階級の婦人なだけであった はずの女性ふたりが、 なにゆえ道を踏み外したのか? ひとりは、「うまく断れない」がゆえに、寒い冬の物置部屋で 1晩過ごすこと。 もうひとりは、「夫に拒否の意志を伝えられない」がゆえに、 安全な最高級ホテルを手放し、 娼婦の住むホテルで眠り、 パナマに着いた後にも、娼婦の住むホテルに戻ったこと。 つまり、 コンファタブルなネドコは、女性にとって最重要な問題 であったにも拘わらず、 それを本人たちも自覚していたにも拘らず、 手放したことが、物理的なターニングポイントなのである。 もう1点は、飲酒。 このひとたちは、ストレートでジンをガブガブ飲む人たちである。 おそらく同じ年代のニューヨークが舞台の サリンジャーの小説に出てくる成人(上流階級)女性は、 カクテルは飲んでも、ストレートのジンは飲んでません。 明らかに酒好き度がふつうじゃないです。 南米でも米国の孤島でも、ジンをガブガブ飲んでいたら、 虚脱は目前である。 虚脱し、積極的に身を持ち崩す女性がどうなっていくのか? この小説の力強いところは、 2つのパートが出会う構造にしておきながら、 何らの共鳴も無く、お互いを侮蔑しつつ 再会したふたりが別れるところである。 さらに、ミス・ゲーリングは最後のおとこである商人に 「お前のことなど忘れていた」 と置き去りにされ、 好ましくないからこそ進んでついて行ったにも かかわらず、 離れる事が出来て開放感を感じることはなく、 悲しみを感じる。 そして、「わたしは確実に聖人に近づいていっている」 と考えるのである。 たぶん、 幼児期のパートの、聖なる少女性みたいなところ が、女性(あるいは男性)読者を つかんで離さないのではないかと推測するのですが、 あの幼児期パートに幻惑されて、 始末の悪いアル中パートが、アル中と見られないのだろうなぁ。 この、力でねじ伏せる結末の付け方は何回もは通用しないだろう から、未完の作品が多かったというのも うなづきました。

Posted byブクログ