すでに起こった未来 の商品レビュー
The Ecological Vision の邦訳であるが、各章のつながりが不自然で、目次を原著と突き合わせてみると、残念ながら、31章のうちの13章の抜粋版だった。 冒頭でドラッカーが述べているように、未完の本に含める予定だった一つの部品としてみるほうが正しいのかもしれない。 ...
The Ecological Vision の邦訳であるが、各章のつながりが不自然で、目次を原著と突き合わせてみると、残念ながら、31章のうちの13章の抜粋版だった。 冒頭でドラッカーが述べているように、未完の本に含める予定だった一つの部品としてみるほうが正しいのかもしれない。 貴重なドラッカの遺品の1つとしてみることもできる。 Ⅰ部、Ⅱ部の、アメリカに関する記載の部分に、参考となるものが多かった。気になったのは以下 ・アメリカの象徴的な人物は、アブラハム・リンカーンである。 ・アメリカに特有の理念と制度は、政治の領域にある。今日のアメリカは最も歴史のある徹底した世俗的国家である。(アメリカは、反教会的な感情がない) ・二人の経済学者、ケインズとシュンペーターの対比、正しかったのはシュンペーターであった。 ・ケインズの本当の敵は、シュンペーターでなく、シュンペーターが途中で袂をわかった、ドイツ新古典派であって、2人はともに敬意をはらっていた。 ・ケインズ経済学を採用したイギリスとアメリカが停滞し、しなかった日本と西ドイツが驚異的な経済成長と遂げた。 ・内部告発は一種の密告である。おそらく西欧の歴史において、密告を奨励した社会が、血なまぐさく悪名高い先制君主の時代だけだった。 ・7000年前に誕生した”灌漑文明”をもって、文字を生み出したということで、人類の歴史のはじまりだった。灌漑文明の時代は、優れて技術的イノベーションの時代だった。 ・第1次大戦が発生したのは、コミュニケーションが十分でなかったために引き起こされた。 ・コミュニケーションをするのは常に受け手である。 ・コミュニケーションと情報はまったく別ものである。 構成は、以下になります。 はじめに Ⅰ部 アメリカの経験 1章 アメリカの特性は政治にあり Ⅱ部 社会における経済学 2章 アメリカ政治の経済的基盤 3章 利益の幻想 4章 シュンペータとケインズ 5章 ケインズ Ⅲ部 マネジメントの役割 6章 マネジメントの役割 Ⅳ部 社会的機関としての企業 7章 企業倫理とは何か Ⅴ部 仕事・道具・社会 8章 技術と科学 9章 古代の技術革命に学ぶ Ⅵ部 情報社会 10章 情報とコミュニケーション Ⅶ部 社会及び文明としての日本 11章 日本画に見る日本 Ⅷ部 社会を超えて 12章 もう一人のキルケゴール 終章 ある社会生態学者の回想
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ウィズコロナ、アフターコロナについて考えるため、読みました。本書の内容を一言でいうと「既に起こっていることをもとに考えることが重要」です。未来を推測することはできないと言いながら、出版後20年以上経過しても内容が色あせていない慧眼に感服しました。
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・未来を予測しようとしても無駄。 ・重要なことは「既に起こった未来」を確認する事である。すでに起こってしまい、もはやもとに戻ることのない変化、しかも重大な影響力を持つことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析する事である。
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社会生態学者ドラッカーの論文集。1946~1992年に主に社会動向について書かれたものを編纂しており、中には難解なテーマを取り扱ったものもあるが、分かりやすく最も印象に残ったのは「日本画に見る日本」だった。ドラッカーが日本の美術に関心を持っていたことは知ってはいたが、美術を通じ...
社会生態学者ドラッカーの論文集。1946~1992年に主に社会動向について書かれたものを編纂しており、中には難解なテーマを取り扱ったものもあるが、分かりやすく最も印象に残ったのは「日本画に見る日本」だった。ドラッカーが日本の美術に関心を持っていたことは知ってはいたが、美術を通じて日本人の価値観や社会的な特性にまで見通す眼力の鋭さは「さすがドラッカー」と思わせるものがある。この章には多数の画家や絵が紹介されているが、恥ずかしながら知らないことばかり。日本美術の素養があれば、ドラッカーの意をより理解できるかもしれない。この賞に紹介された画家や絵についても調べてみたい。 ドラッカーの著作は数冊読んだが、日本を主題にした章や節は数多く存在する。マネジメントや技術史等、特定のテーマ別に再編纂したシリーズがあるが、「日本」をテーマにしたものがあればいいのに、と思うのは私だけであろうか?
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灌漑文明についての記述は大変興味深い、現代に起こっている急激な変化以上の変革が過去にあったことがわかりやすく紐解かれている、そしてこの現代に起こっている変革にどうすればよいのかも明快に指し示している。この人の見る能力は日本を述べる中に、女性が実権と財布を握っている家庭生活の現実が...
灌漑文明についての記述は大変興味深い、現代に起こっている急激な変化以上の変革が過去にあったことがわかりやすく紐解かれている、そしてこの現代に起こっている変革にどうすればよいのかも明快に指し示している。この人の見る能力は日本を述べる中に、女性が実権と財布を握っている家庭生活の現実がある、という辺りを見たときに間違いないと思った。図書館で数冊借りた後その中からこの本を購入した。 情報とコミニケーションに関する考察は現代にも当てはまると思われる、情報とは何か、コミニケーションとはなにか、どういうあり方で意味があるのか、漠然としていた概念を見事に解き明かしてくれている、
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この間、ドラッカーの著作をたくさん読んできた。マネジメント系のもの、社会系のもの。自伝である「傍観者の時代」は、ドラッカーその人を知る上でも、20世紀の歴史を知る上でも実に面白い本だった。しかし、この「すでに起こった未来」は、他のいずれの著作とも違う。 時代的な幅は40年にも及ん...
この間、ドラッカーの著作をたくさん読んできた。マネジメント系のもの、社会系のもの。自伝である「傍観者の時代」は、ドラッカーその人を知る上でも、20世紀の歴史を知る上でも実に面白い本だった。しかし、この「すでに起こった未来」は、他のいずれの著作とも違う。 時代的な幅は40年にも及んでおり、内容も一見、関連性に乏しいと思われる13本の論文からなっている。 例えば、マネジメントへの傾倒がなければ上梓していたという「アメリカ論」や、技術に焦点を当てた「仕事の歴史」にまつわる論文は、他ではあまり見かけないものだった。その他、シュンペーターとケインズに言及した経済に関する論文や、ドラッカーの独特の利益に対する考え方について述べた「利益の幻想」も、コンパクトにまとまっており分かりやすい。 しかし、最も印象深かったのが、日本画から日本人を論じた「日本画に見る日本」と、「もう一人のキルケゴール」だ。 ドラッカーが日本画をコレクションしていたのは有名な話だが、日本画に関する知識は半端ではない。そして単に日本画に詳しいだけではなく、日本画を題材に、日本固有の文化の卓越性を論じている。 たとえば、外国から技術をとり込んだ後に、それを昇華させオリジナリティーを築き上げる能力。また、日本画における空間認識が西洋絵画のものと全く異なっており、知覚能力の独自性は他に類を見ないものだと語っている。この点については、現代における電子メディアの登場が、世界の見方を分析的思考から、知覚的なものの見方に変化させたというマクルーハンを引き合いに出し、日本の文化が持つ知覚能力の特性は、本質を把握して再構成する能力であるとして、これが近代的な経済活動の発展を導いたという興味深い指摘をしている。 「もう一人のキルケゴール」は、1949年に書かれたものだ。ちょうど第2次大戦後で、第1次大戦からナチスがヨーロッパを支配するという、不条理の目撃者となったドラッカーの、人間と社会に対する絶望が窺い知れた。 哲学の文脈でいえば、ヘーゲルやマルクスが問う「社会はいかにして可能か」や彼らの歴史観が、実存の忘却に導くとし、「人間の実存はいかにして可能か」という問いの重要性を語り、その答えを導いた唯一の思想家としてキルケゴールを取り上げている。 ドラッカーは社会や組織について多くを語ったが、やはりその中心には人間が、客観的・抽象的な存在としてではなく、実体的、実存的な存在としてなければならなかったことがよく分かった。 これら、何の脈絡もないような13篇の論文集のタイトルが、「すでに起こった未来」となっている。 終章の唯一書き下ろしである「ある社会生態学者の回想」の中で、ドラッカーは、自身の造語である「社会生態学」の仕事について、「すでに起こってしまった変化を確認すること」と言っている。 ここに集められた13篇の論文の全てが、すでに後戻りできない変化であり、大きな影響力をもちながら、いまだ広く認識されてはいない変化について書いているというわけだ。 これらの論文から、主要な著作からは知り得ないドラッカーの一側面が知れるというだけでなく、ドラッカーの求めたものが何なのかということを知るうえで、本当に貴重な一冊だということができる。
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▽やや大げさに言うならば、今後一〇年もすれば、個人を組織のニーズに適応させる手段としての「マネジメント開発」への関心は急速に薄れ、逆に、組織を個人のニーズや意欲、潜在的能力に適応させる手段としての「組織開発」への関心が、はるかに高まってくるはずである。 ▽知識労働にはそのような...
▽やや大げさに言うならば、今後一〇年もすれば、個人を組織のニーズに適応させる手段としての「マネジメント開発」への関心は急速に薄れ、逆に、組織を個人のニーズや意欲、潜在的能力に適応させる手段としての「組織開発」への関心が、はるかに高まってくるはずである。 ▽知識労働にはそのような前提はあてはまらない。たしかに、唯一最善の方法というものは存在するかもしれない。しかしそれは、仕事の物理的特性、ましてや知的特性によって決まるものではなく、個々の人間によって決まるものである。気質によって決まるものである。 ▽今後マネジメントに関して最も重要な意味をもつ変化は、社会の意欲や価値観のあり方までが、経営者管理の仕事ぶり・能力・責任感・価値観にかかってくるようになるということである。(マネジメントの役割、1969) ▽組織内コミュニケーションを成立させるためには、従業員と言わず学生と言わず、彼らコミュニケーションの受け手が、常に可能なかぎり意思決定の責任を分担するようにさせなければならない。説明によってではなく、意思決定の責任の経験によって理解させなければならない。(情報とコミュニケーション、1969) カバー装丁:川畑博昭 難しい…特に最後の方の論文は今の私には情けないことに理解しきれません。 日本について書いてあるのでわくわくして読んだら 日本の文化なはずなのに全然知らない人ばかりでショックでした。 この人の守備範囲の広さに舌を巻きます。 利益はコストという考えに一番驚いた。
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40年以上にわたって書かれた論文集である。 本書を読んで、「あなたの意見は?」と聞かれると答えはない。つまり私には難しかった。 それでも、「マネジメントの社会的機能」の章は、興味あっただけに楽しく読めて、参考にもなった。
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この本のキルケゴール論が素敵だったとどこかで誰かが書いていたのを思い出して読んでみました。どことなくエッセイ風で、他の主要著作と比べると少し毛色が違うのではないでしょうか。 キルケゴールの章もよいですが、ある社会生態学者の回想、と題された最後の章の自己分析も楽しいです。日本画...
この本のキルケゴール論が素敵だったとどこかで誰かが書いていたのを思い出して読んでみました。どことなくエッセイ風で、他の主要著作と比べると少し毛色が違うのではないでしょうか。 キルケゴールの章もよいですが、ある社会生態学者の回想、と題された最後の章の自己分析も楽しいです。日本画など日本について章も、よく見ているなというのが分かっていまさらながら感心します。もちろんコミュニケーション論やシュンペータとケインズの経済学論もいいですよ。
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大臣が私生活で職責のために行っていることを半分でもしたらとてつもない悪者だ。企業倫理 マネジメントの主務は「知識を生産的なものにすること」生産性とは質であるが、いまだ我々は質なるものを定義することはできない。 コミュニケーションは常に宣伝である。コミュニケーションの送り手は常にあ...
大臣が私生活で職責のために行っていることを半分でもしたらとてつもない悪者だ。企業倫理 マネジメントの主務は「知識を生産的なものにすること」生産性とは質であるが、いまだ我々は質なるものを定義することはできない。 コミュニケーションは常に宣伝である。コミュニケーションの送り手は常にあることを理解させたいと考える。最も完璧なコミュニケーションは経験の共有である。論理とは少しも関係ない。
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