豚の戦記 の商品レビュー
政治的な思想とか民族間の対立などという的確な理由はなく、面白半分に若者が徒党を組み、無差別に老人を殺害する。最初はグロく陰惨で血が凍るようなのを期待しワクワクしたのだが、あれどうも様子違うぞ? 襲われる老人側も恐怖に震えるが、理由がないので、まるで疫病を相手にしてるかのような感...
政治的な思想とか民族間の対立などという的確な理由はなく、面白半分に若者が徒党を組み、無差別に老人を殺害する。最初はグロく陰惨で血が凍るようなのを期待しワクワクしたのだが、あれどうも様子違うぞ? 襲われる老人側も恐怖に震えるが、理由がないので、まるで疫病を相手にしてるかのような感じ。 でも実はこれが何より怖い。理由。若者は社会に不満を持っている。今の世の中をこういうふうにした先人が心から憎い。年とってれば誰でもいい。「人」として扱っていないのである。2018年7月現在、ヌーブラの様に日本国にピッタリ。
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あるとき青年たちが突然、老人を襲うようになる。 まずは闇夜に乗じて、新聞売りが殺される。 夜中のそれを目撃してしまったのは自称「青年仲間」の6人。 (この場面は中原昌也の「殺れ!」という気迫を連想。) 題名の通りに各陣営に分かれて一斉に、という戦争ではない。 だいいち家族がいる。近所づきあいも続く。 しかし徐々に漏れ聞こえてくる。 「対豚戦争」とは青年の側の理屈。 一方的な老人迫害運動なのだ。 表だっての襲撃はない、明るい場では不穏な会話をする。 闇夜に紛れて、匿名の集団となって、投石したり瓶を投げたりトラックで付け狙ったり。 自分の息子らが青年たちに組しているかもしれないという疑惑も、ひたひた迫る。 このあたりは妙にリアルで気味が悪いくらい。 視点人物ビダルは「老人に片足突っ込んでいる」くらいの年齢で、かたや老人仲間の性と金への貪欲を嫌悪し、かたや青年の一団に恐怖し。 筒井康隆的にコミカルなブラックコメディ(「銀齢の果て」とか)と読むこともできる(ビダルがモッテモテなのは「薬菜飯店」や「残像に口紅を」)が、うそ寒い気にもなる。 現代日本に蔓延する老害叩き、集団圧力への抵抗不可能性、など「そのまんまカリカチュア」になっている。 未来予見的でもあるが、世代間の問題は人類に普遍的ということでもあるのだろう。 笑える。怖い。教訓的。寓話。ほら話でもある。など一言では言い切れない、つまりは面白かった。
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非常事態の中、仲間と集って いつものダルな生活を続ける・・・のは、 実は傍から見ると、相当ナンなもんなんだろうか・・・??と、まさに現在の我が身に引き寄せて、 首を竦めたくなってしまった。 ^^; 我ながらつくづく腹の据わらない 軟弱であることよ・・・あうあう。 50年も前に「若者の老人狩り」なんてシチュエーションを、それもラテンな国で創造していた作者の頭ん中が見たい。
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ボルヘスの年下の親友ビオイ・カサレスの中編作品。 アルゼンチンで問題化している老人と若者の摩擦。いわゆる”オヤジ狩り”に巻き込まれた主人公。 シビアな内容かと思えばちゃっかり年下美女のハートをゲットしてしまってやっぱりラテン男はしょぼくれたりしないな。
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