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長谷川平蔵 の商品レビュー

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2015/10/04

長谷川平蔵が創設した人足寄場は、世界ではじめて収容者の社会復帰をはかった、画期的な行刑施設として名高い。本書は、寄場の設立と経営に苦心奔走する荘年時代を中心に、酸いも甘いも噛みわけた江戸っ子旗本の風貌と生涯を描きだした、すぐれた平蔵伝である。(親本は1975年刊、1994年文庫化...

長谷川平蔵が創設した人足寄場は、世界ではじめて収容者の社会復帰をはかった、画期的な行刑施設として名高い。本書は、寄場の設立と経営に苦心奔走する荘年時代を中心に、酸いも甘いも噛みわけた江戸っ子旗本の風貌と生涯を描きだした、すぐれた平蔵伝である。(親本は1975年刊、1994年文庫化) ・はじめに ・第一部 長谷川平蔵伝 ・第二部 人足寄場 著者は法学博士である。法制史研究家でもある。 父親も火付盗賊改を行っていたのではないかと推定しているが、法律家ならではの論証が面白い。刑務所の臭い飯は、肝油がかけてあるためとは知らなかった。

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2013/08/16

古本で購入。 池波正太郎の代表作『鬼平犯科帳』で一躍有名になった、「鬼平」こと長谷川平蔵。 この作品が世に現れるまでほとんど忘れられた存在だった中級旗本が、一体如何なる人物であったのか、また何をなした人物であったのか。 その生涯を追いつつ、「火付盗賊改」ではなく「人足寄場取扱」...

古本で購入。 池波正太郎の代表作『鬼平犯科帳』で一躍有名になった、「鬼平」こと長谷川平蔵。 この作品が世に現れるまでほとんど忘れられた存在だった中級旗本が、一体如何なる人物であったのか、また何をなした人物であったのか。 その生涯を追いつつ、「火付盗賊改」ではなく「人足寄場取扱」としての長谷川平蔵の歴史的位置付けを見ていく。 人足寄場は寛政2年(1790)、松平定信が発意し長谷川平蔵が具体化することで誕生する。 江戸に溢れる無宿たちを犯罪者予備軍と見なし、収容するのが目的であった。 しかし、寄場は単なる牢獄ではなかった。 人足に様々な労働をさせ、賃銀を支払い、出所した際のために積立てを行った。また、心学者を招聘して人足に講話を聞かせ教育・感化を試みたことは、人足寄場の最大の特色と言える。 人足寄場の目的は無宿や軽犯罪者の社会復帰であり、因果応報的な苦痛を与えることではなかった。 平蔵の建議案にある 「悪党ニても人に御座候間、感候者早出来可仕奉存候」 「親之子ヲ教訓仕候志ニて、仕候ハバ、行届可申哉と奉存候」 という、人足たちへの教化に対する考え方は、寄場が存在する間、きちんと貫かれていた。 人足寄場は「懲役禁錮の自由刑執行を主とする行刑制度」である、西洋の近代的監獄制度によく似ている。 これをオランダの影響、つまり蘭学から得たアイデアと見る向きもあるが、それは間違っていると著者は言う。人足寄場はあくまで日本独自の制度であり、「『義理人情』から生まれた」「日本の産んだ法律文化の精華」であった。 平蔵の先祖から書き起こされるその生涯は、不明な点も多い「鬼平」の実際の姿を生き生きと描き出している。 時に「山師」などと悪しざまに非難された平蔵だが、傑出した能吏であったことがよくわかる。時代小説のヒーローとなるのもさもありなんと言ったところ。 人足寄場についても、その歴史・仕組み・人足たちの暮らしという多方面からのアプローチで、立体的に描いている。 著者は極東国際軍事裁判において戦勝国による報復裁判に毅然として反対した熱血漢にして、バリバリの法制史家だそうだが、読みやすくわかりやすい文章を書いている。 江戸時代のひとつの側面を知ることができる好著。

Posted byブクログ