世界最悪の旅 の商品レビュー
先日読んだ『挑む人たち。』の巻末で紹介されていて、以前にも読みたいと思ったまま手にする機会を逸していた本書だったので、いよいよ読んでみた。 100年以上前、南極点にまだ誰も到達していなかった頃の話。 当然、気象観測の蓄積もノウハウの蓄積もなく、機器も装備も「アナログ」なものばか...
先日読んだ『挑む人たち。』の巻末で紹介されていて、以前にも読みたいと思ったまま手にする機会を逸していた本書だったので、いよいよ読んでみた。 100年以上前、南極点にまだ誰も到達していなかった頃の話。 当然、気象観測の蓄積もノウハウの蓄積もなく、機器も装備も「アナログ」なものばかり。ましてやGPSなんて便利なものもない時代に、前人未踏の酷寒の地を行こうというのだから、それは「世界最悪」の旅に決まっているのである。 しかも、本作の探検隊が南極点にたどり着く僅かひと月前に、別の探検隊が極点制してしまっていたとなれば、その絶望感たるや計り知れないものだったろう。 描かれている彼らの奮闘ぶりも、想像を絶する状況の連続(それも何か月も)で、日本の冬ですら「冬なんて一生なくなればいいのに。できれば冬眠したい」くらいに思ってしまう私からすれば、狂気の沙汰以外のなにものでもない。 しかもこの探検隊は、あまりに悲しい結末を迎える。わかっていて読んだけれども、隊員の、死を覚悟した行動には涙を禁じ得ない。と同時に、人間の生命力の強さにも心底圧倒される。これほどの状況であっても、人は自分を鼓舞し、体力精神力を超えて行動し続けることができるのかと驚嘆する。それでも自然の力の前には、人間は無力なのだけれども。 動物たちの犠牲もとても悲しかった。彼らもつらい時間を過ごしたのだろうな、それを終えることができたのはむしろよかったのかな、でも連れていかれなければそんな運命にもならなかっただろうに。 ここまでして、まだ見ぬ土地へと入っていくその人間の探求心とは、いったいどれほどのものか。物事を突き詰めんとするその強い思いには、いつも圧倒される。
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実際の探検隊の日記をもとに構成されている。冒険のワクワク感と壮絶な自然との対峙。現代と比べて当時の装備品の非力なことを思うと、その冒険が如何に危険であったか。 それぞれの死に方は生き方なのか。
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角幡唯介の著書に触れられていたので読んでみた でも角幡が述べていた極夜でのコウテイペンギンの卵を探す内容が載っておらず… 他の出版社の版には載ってるのかな? とりあえず次は有名な(?)中公文庫のを読んでみようと思う この小学館版は訳が良いのか非常に読みやすく一晩で読了した ...
角幡唯介の著書に触れられていたので読んでみた でも角幡が述べていた極夜でのコウテイペンギンの卵を探す内容が載っておらず… 他の出版社の版には載ってるのかな? とりあえず次は有名な(?)中公文庫のを読んでみようと思う この小学館版は訳が良いのか非常に読みやすく一晩で読了した ペンギンのくだりが載ってたら満点だった
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
世界初の南極点到達という目標が絶たれ、帰路は悪天候により仲間がひとり、またひとり死んでいく異常な世界。覚悟できているのか、あまりに淡々と死が描かれているのが怖い。
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南極点を目指すイギリスの探検隊による壮絶な探検記。著者は探検隊のメンバーの1人であるチェリーであり、彼の視点からも描かれているが、主に極点隊の日誌を抜粋する形で、探検がどの様に進行したかをまとめている。 「旅」とタイトルにはあるが、旅の範疇をはるかに超えていて、大冒険とした方が相...
南極点を目指すイギリスの探検隊による壮絶な探検記。著者は探検隊のメンバーの1人であるチェリーであり、彼の視点からも描かれているが、主に極点隊の日誌を抜粋する形で、探検がどの様に進行したかをまとめている。 「旅」とタイトルにはあるが、旅の範疇をはるかに超えていて、大冒険とした方が相応しい。状況は最悪だったが、探検隊の活躍は想像を絶するもので、探検隊は素直に賞賛に値する。 チェリーは最後に「探検とは、知的情熱の肉体的表現なのだ。」と述べている。人類にとって未踏の地が多く、国の威信や名誉をかけて熾烈で熱い競争が繰り広げられていた時代の話ではあるけれど、心に響く言葉でした。 熱く生きたい人にオススメです。
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