抗争する言語学 の商品レビュー
言語学史の本であるが、各理論の内容を扱ったものというよりはその大枠にある背景を説明したもので、原題「言語学の政治学」にあるように、各理論がその時代の政治から受けた影響(要するに生成文法が助成金をもらったとかマルの理論がスターリンに潰されたとか)や逆に政治や社会に与えた、与えかねな...
言語学史の本であるが、各理論の内容を扱ったものというよりはその大枠にある背景を説明したもので、原題「言語学の政治学」にあるように、各理論がその時代の政治から受けた影響(要するに生成文法が助成金をもらったとかマルの理論がスターリンに潰されたとか)や逆に政治や社会に与えた、与えかねない影響(サピア・ウォーフ仮説が人種差別につながるとか)などを中心に、言語学を「自律的」、「社会的」、「人文的」に分けて、これらがどのように「抗争」しあってきたかが書かれている。普段接することが少ないだけに読んでみると面白い。田中克彦『言語学とは何か』と扱う範囲がほぼ重なっており、「訳者あとがき」でも読み比べることを勧めているが、2人のチョムスキーに対する態度の取り方の違いや、本書の方が言語学の変遷における政治や社会の状況にやや重点が置かれている点が興味深い。
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