1,800円以上の注文で送料無料

柳宗悦 の商品レビュー

0

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2009/12/14

 鶴見俊輔というと、数多くの対談をし、マンガなども含めた広い領域を視野に入れた評論を書き、『思想の科学』という雑誌や「ベ平連」などの支柱になってきた人だ。おもしろそうな人なのにちょっと距離を感じていたのが、この本で一変した。  柳宗悦については、仏教思想を柱とした民芸運動の推進者...

 鶴見俊輔というと、数多くの対談をし、マンガなども含めた広い領域を視野に入れた評論を書き、『思想の科学』という雑誌や「ベ平連」などの支柱になってきた人だ。おもしろそうな人なのにちょっと距離を感じていたのが、この本で一変した。  柳宗悦については、仏教思想を柱とした民芸運動の推進者、というぐらいしか知らなかった。鶴見俊輔がこの人の評伝を書くこと自体、意外な組み合わせだった。美術分野の視点のものかと思って読み始めたが、読み進むにつれて、非政治的領域に足場を置いた人物が、政治にどのようなプラスの影響力を及ぼすかをさぐったものだということがわかってきた。この本の切り口は、政治思想史なのだ。そして、柳が力を入れていた民芸運動がある局面で、政治に対するプロテストに転化する。  鶴見俊輔は別の文章で、なぜ柳宗悦をとりあげるのか、という問いに答えてこう書いている。「なぜ柳宗悦が私にとって大切な思想家かというと彼が、熱狂から遠い人だからである。」(『近代日本思想体系・24巻』解説)柳宗悦の穏やかで頑固な姿勢にかなり早い時期からひかれていたようだ。鶴見俊輔は行動をする人たちに支持されてきた人なので、非政治的人間に対する共感は意外で、おもしろかった。  また、柳宗悦の妻、声楽家の兼子について触れている箇所では、兼子を高く評価している。柳宗悦よりも高く評価しているところも日常を重視する鶴見俊輔らしい。よい評伝は、周辺の人物のこともしっかり捉えている。  

Posted byブクログ