後西遊記 の商品レビュー
「じゃあ訊くが、日本の週刊誌ジャーナリズムの強さはどう解釈するのだ」 「すると、おめえは"いかなる国の原水爆にも反対する"もいう考え方には不賛成なんだな?」 「太平洋ベルト地帯でもないこんな不便な所の地価がそんなに簡単に上がってたまるか」 …というセリフがまあ...
「じゃあ訊くが、日本の週刊誌ジャーナリズムの強さはどう解釈するのだ」 「すると、おめえは"いかなる国の原水爆にも反対する"もいう考え方には不賛成なんだな?」 「太平洋ベルト地帯でもないこんな不便な所の地価がそんなに簡単に上がってたまるか」 …というセリフがまあゴロゴロでてくる、一種の奇書。 タイトルの通り、元は名作『西遊記』の続編的スピンアウト作品なんだけれども、訳者(?)が前書きで「今日的な批判を適当に織り込」んでいることを明言しており、作中のいたるところで90年代かそのあたりの日本の世相や政治批判を盛り込んだ文章にぶつかる。 ほんの少しのスパイス程度ならまだクスッと笑ってすむのだけど、ジャーナリズムへの批判が長々と交わされたり、訳者の主義主張の好悪がにじみ出ているのは、「物語を読む」という上ではかなり辟易してしまう。 訳者が、原書を「単なる類書ではなく面白くなっている」といっているが、なら完訳してほしかったな…と思うところ。 「今日的批判」というのも時間が経つと、読者にとってはピンと来なくなることが多い。 「ピーナッツ」っていわれて分かる人は今は一定年齢層以上だろうに…。 時代が経てば経つほど、「今日的批判」…その当時の世相批判やそれ由来のおもしろみも半減していくのはたしかなのて、構成の残念さが否めない。 という独特な挿入文はあるけれど、ストーリー的には『西遊記』通りの妖怪あり美女ありの活劇、さらに前作主人公が強キャラとして現主人公を助けるという王道激熱展開もある、普通におもしろい内容。 原書にはとんでもないド下ネタ回もあるそうだが、それでもなおのこと普通に訳してほしかった…とつくづく思ってしまった。実に惜しい。
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