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ポーランドを生きる の商品レビュー

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2021/11/24

日本人学校中学部三年のとき、社会科のK先生が我々に卒業論文を課した。当時はポーランドの自主管理労組「連帯」の動向に興味をもっていたので、ポーランドの戦後史についてまとめようと考えた。私が目指したのは、ポーランド戦後史を概観しつつ、社会主義国家がいかに歪な存在であるかを示すことだっ...

日本人学校中学部三年のとき、社会科のK先生が我々に卒業論文を課した。当時はポーランドの自主管理労組「連帯」の動向に興味をもっていたので、ポーランドの戦後史についてまとめようと考えた。私が目指したのは、ポーランド戦後史を概観しつつ、社会主義国家がいかに歪な存在であるかを示すことだった(!)。 しかし、異国の地にあって中学生が収集し得る資料など知れている。中央公論『世界の歴史』(旧版)、佐藤経明『現代の社会主義』、マルクス・エンゲルス『共産党宣言』、そして若干の新聞記事。それが全てだった。受験勉強の合間を縫って、ヤルタ会談、カティンの森事件、ワルシャワ蜂起、社会主義政権の樹立、ポズナニ暴動へと順調に筆は進んだ。 その頃、現実のポーランドでは連帯による民主化要求が頂点に達し、1981年にはヤルゼルスキ政権がついに戒厳令を布告して連帯を弾圧するに至る。憤りを発し卒論は連帯草創期に入ったところで停滞、高校受験のため帰国したこともあって結局卒論は未完に終わった(当然ながら提出しないでも卒業できた)。 それから10年以上が過ぎた1994年、ヤルゼルスキの回顧録である本書が日本で出版された。早速買い求めて拝読し、旧ソ連の軍事介入や物資供給停止を恐れて戒厳令を発するに至った苦悩を具に知ることができた。歴史を一面からみてないけないと改めて実感した一書である。現在は版元品切れで入手困難であることが残念でならない。

Posted byブクログ