ララバイ・タウン の商品レビュー

ロバート・クレイス(著者),高橋恭美子(訳者)

私立探偵エルヴィス・…

[文庫ＯＦＦ]

私立探偵エルヴィス・コールは、映画監督のピーターから無名時代に別れた妻子を探してくれと依頼される。数々のテレビ、映画のイメージを織り込み、ユーモアとバイオレンスを巧みにミックス。傑作ハードボイルド。

2022/08/02

コール＆パイクシリーズの三作目。前作が少し暗めの「ハードボイルド」だったのに比べ、今回はハリウッドの映画監督やニューヨークマフィアを相手に事件に巻き込まれていく。テレビドラマのようなストーリー展開ですが、このシリーズの良さはロジックよりコール＆パイクのキャラクター。何があっても女性と子どもを守る信念。軽口を叩きながら実はタフガイのコールと、無口でめちゃめちゃ強いパイク。2人は過去に関わった人たちからの信頼があり、いざという時に頼れる仲間がいる。かっこよすぎです。

2021/12/13

ロスの探偵エルヴィス・コールの3作目。

Eチケット。
知らない世代のために説明すると、
むかしむかし、ディズニーランドにフリーパスのチケットがなかったころ、
AからEの5種類のチケットしかなかったことがある。
5種類が2枚づつだったか、まとめて1冊に閉じられていて、
そのチケットによって乗れるアトラクションが決まっていた。
人気がある面白いアトラクションがEチケット。
私がわかったのはそれぐらいだが、
それ以外に映画ネタやドラマネタがちりばめられているらしい。

それはさておき、前作に引き続き、
依頼されてもいない厄介ごとに首をつっこむエルヴィス。
有名な映画監督の元妻と息子を無事探し出したのに、
元妻が巻き込まれてしまっていたマネーロンダリングから足を洗わせることに。
当然マフィアと対決をする羽目になる。

殺人事件ではないせいか「謎解き」ではないが、
会社の所有者を知るためわざと車をぶつけたり、
ギャングの手先の振りをして下っ端を脅しつけ情報を得たりとか、
マフィアとの交渉材料を探す「捜索」は楽しい。

エゴイストでひとりよがりだった映画監督が、
息子を守ろうと暴力に立ち向かい、
命を賭けた場面は良かった。

2019/12/20

　25年前の翻訳。27年前の原著。エルヴィス・コール・シリーズ第三作。自分もコールも三十代だよ、WAO！

　今年邦訳された『指名手配』は純粋なシリーズとしては物凄く久々だったとは聴いていたが。アマゾンで古い作品をかき集めてはみたもののすべてが揃ったわけでもない。近隣の図書館の蔵書目録にも出てこない。なのにこの高質で香り高きハードボイルドのホンモノの作品群。

　知れば知るほど、ずっとこのシリーズを見逃していた自分がハードボイルドファンとして失格だと確信することになるこのところの日々である。

　本書を読んで思ったこと。まさにハードボイルドの王道をゆく正統派高級作品。職業＝もちろん私立探偵なのである。

　己れにモラルとルールを課す。道を外れない。腕に少々の自信。武力で足りない部分は、相棒のこわもてジョー・パイクに頼む。これもハードボイルド小説には欠かせぬ部分だ。必要に応じて招集できる仲間、情報源としての引退した刑事なども含む。女性にもてて優しい。子供に眼がない。多少怖気をふるっても可笑しくない切った張ったの現場に、時には出向かねばならない。すべてのもとに知略があり、会話にはユーモアを欠かさない。

　きっかけは小さな依頼でよい。個性の立ったわき役たち。どうしようもない男と、独り立ちした女がいたりする。人探しから始まってよい。「ロスの探偵エルヴィス・コール」との副題が付いているくせに本書はあっという間にニューヨークに舞台を移す。人を探すから仕方がないのだ。まあいい。

　もちろん探し当てた美女は、既に犯罪の片棒を担がされていたりする。探偵は帰って依頼主に状況を報告すればそれで仕事は済むはず。しかしハードボイルド小説は、そこからすべてが始まる。探偵は騎士なので弱っている美女や子供に背を向けて帰るわけにはゆかないのだ。面倒ごとに巻き込まれる習性。探偵の資質。とりわけハードボイルドというジャンルにおいては欠かせないエッセンス。

　敵は残虐で異常でなければいけない。出来の悪い人間による残酷な暴力の壁。探偵が立ち向かうべきものは、やわなものであってはいけない。見知らぬ街を訪れたエトランジェは、そこにはびこる悪の芽を摘み取って去ってゆくのだ。

　以上、ぼくのハードボイルド観を、ひとつひとつ確認させてくれる、お手本のような私立探偵がここにいる。マイク・ハマーやスペンサーのようにタフで超人でスーパーな負け知らずという絶対の主役ではないまでも、もう少し常人に近い場所でのへらず口と弱さとを垣間見せながら、常識を多少超えたところまで痩せ我慢に徹する、この愛すべき善人探偵エルヴィス・コールがここにいる。

　そんな安心感と郷愁を得るための読書があっても良いだろう。そんな古臭くても、無理をしない、でも正義の味方であることに拘ろうとする意欲満々の探偵が一人くらいいたって、一向に構いやしないだろう。至高の読書タイム、ここに極まれり、である。

2018/12/25

舞台を東海岸へ。イライラさせる有名監督とマフィアとの間でなんとか窮地を脱すべく奮闘するコールとパイク。金でなく自分の信義のために。信義を貫くためには自らの命も賭して。ハードボイルド・ファンタジー！（笑。面白かったです。

2009/10/07

とても面白かった。
減らず口の主人公と無口の相棒が絶妙なペアだ。
あまり期待してなかったのだが、どうしてどうして。
哀愁のある文章につい感情移入してしまう。
この作者の他の著作も読んでみようと思う。